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サラリーマン生活10年目。33歳になった僕は、勤める会社の東京本社で然して特筆すべき能力もない標準的な営業マンとして働いていた。

高校卒業後に上京して十数年。東京で過ごした年月が故郷で過ごした年月に迫ろうかというある年の冬、中途で入社して数年の会社から突然転勤を言い渡された。ちょうど一年前のことである…。


 

こんにちは、ズッキーニです。サラリーマンをする傍らWeb上でレポート系の記事を書いております。そんな僕もサラリーマンの宿命ともいえる転勤をすることになりました。

劇的に変わった生活に適応するのに必死であまり顧みることのなかった転勤生活について、ジモコロ編集長の柿次郎さんに許可を得て、改めて振り返ってみたくなり書いてみました。ちなみに前後編で超長いから超覚悟してください。

 

1.転勤は突然やってくる

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ほかの会社はどうなのか知らないが、僕の会社ではこうだ。直属の上司に会議室に呼び出され、上司と一対一、神妙な面持ちで伝えられたのは「転勤の決定」「時期」「場所」の3フレーズである。

マニュアルでもあるのか、そこに至るまでの上司の言葉は極めて簡潔だった。

その間に僕が発した言葉と言えば「はあ」とか「え!?」とか「あ、はい」程度で、とにかく急な話に呆然とするだけ。

人生でポカーンとすることはそうそう無いがこのときはポカーンとしたものだ。転勤しそうだとか、そういう気配も前兆も無かったからだ。そう、転勤の命令はいきなりくるのだ。

「嫌です」とか「待ってください」と言った言葉が出てこなかったのは、転勤先として伝えられた土地のことをまったく知らなすぎて、それが自分にとって良いことなのか悪いことなのかすぐに判断できなかったからだと思う。

転勤を打診されたとき、丁度仕事のトラブルなどを抱えている場合、目先の問題から逃げられる魔法を得たような気持ちになり転勤というリセットに安易に乗ってしまう人もいると聞く。

ともあれ僕の場合は「決まった」と言われたことで妙に諦めも早く、そもそも過去の転勤者の顛末を見るに拒否権があった様にも思えず、その瞬間から僕は抗うことより新しい生活のことを色々と想像する事のほうに頭を使っていた。

転勤があるのは承知の上だったが、それでも突然言い渡された転勤のお知らせは衝撃だ。「急なんで、今奥さんに電話していいよ」と仕事中に電話を許可されオロオロしながら電話する。普通に自分の言葉で電話するとうろたえそうだったので、やはり僕も「転勤の決定」「時期」「場所」を淡々と妻に伝えていた。

 

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「転勤って決定事項として伝えられるんですか?」

f:id:kakijiro:20160323115711p:plain「ルール上で正しいかどうかは別として、もう会社の命令としてほぼ否応なく」

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「イヤすぎ〜!」

 

2.マイホームを購入すると転勤を命じられる?

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「車や家と言った大きな買い物をした、または結婚や子供の誕生など『簡単に辞めづらくなったとき』にこそ転勤を言い渡される!」

 

会社は違えど、サラリーマンの間でまことしやかに語られる都市伝説の一つだ。

実際はどうだろうか、数多いる転勤者の中で「車を買ったばかりなのに」とか「家を買ったばかりなのに」という悲惨なエピソードがあると笑い話として印象に残るからだと思うし、そもそも結婚、出産、車や家といった大きな買い物をする年齢が、入社してキャリアを積んで「じゃあそろそろアイツも転勤させよう」という時期と一致している部分も多分にあると思う。

つまり僕は冒頭の噂は完全に「気のせい」だと思っており、むしろ大きな会社になるとそこまで社員の現状を事細かに気を配ろうとはしない気がしている。なぜなら僕はもうすぐ子供が産まれようとしているときに転勤を言い渡され、なかなか大変な目に遭ったからである

 

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「人生で必要なカードを持ち始めると、見せしめで転勤が…?」

f:id:kakijiro:20160323115711p:plain「よく聞くんですけど、あくまで都市伝説レベルの噂ですね」

 

3.会社の都合が優先にされがち

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例え本人には早めに告げられても、社内の諸事情に鑑みて正式に通知がなされるまでは「内々のこと」として秘密にされることがある。

その間は転勤に関わるアレコレについて一切取り掛かれない。家探しの為の交通費も、特別休暇が貰えるのも正式に周知されて以降だ。

僕のケースでは、1ヶ月前に伝えられた転勤話は転勤の2週間前になってようやく社内に通知され、それまで秘密扱い。僕が転勤することなど当然知らない取引先や他の社員と先の予定の話をするのが辛かった。

こうして完全な会社都合により、僅か2週間で新居探し、退去、入居を経て出社に漕ぎ着けなければならなくなったのだが、臨月の妻と二人で新幹線を乗り継ぎ、ホテルに泊まり、僅か2日間で、全く知らない街での家探しである。涙なくして語れない苦労の日々。今回割愛するのが口惜しいほどのドラマの連続である。

単身ではなく、家族連れの転勤であるから新居選びは重要だ。家そのものは勿論、周辺環境やその自治体がどうであるかなど、家族の今後を左右する重要なことなのだから。限られた時間でベストな選択は難しいにしても、失敗はできない訳だから必死だ。

結局「とにかくいいやつ!」という大雑把なオーダーで数件見て、半ばギャンブルであったが一番高くて良さそうな所に決めるしかなく、そういう面からも転勤は考えれば考えるほど働くものには負担の多いシステムである。

 

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前の家は住み始めて僅か4ヶ月で引っ越しに…

 

たまたま入社した会社の、然して重要でもない理由のために僕らの生活はガラリと変えられる。転勤によって色んなものがリセットされ、思いのほか多くのものを失わねばならない。

それはご近所付き合い、友達、馴染みの店、その街への愛着、思い出などなど、転勤先では再びイチから作り直さねばならないってことだ。

転勤して暫くの間、失ったもののことを思い出しながら、たかが会社ごときが一個人に対してこんなこと出来る権限を持っていることすら信じられない! などと憤ったものだが、転勤によって個人が被る苦労は相当なものがある。

僕は幸い妻の理解が得られたので大きな揉め事にならなかったが、家族の反発などがここに加わると、考えただけで気が狂いそうである。

 

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「この前会ったら『刺激がなくてつまらない人間になってる』って元気なかったですよね。顔もなんか変わってたし」

f:id:kakijiro:20160323115711p:plain「昔、バッタは過度なストレスを感じると体が変形すると本で読んだことがあるんですが、僕もこっちきて二重まぶたになりました」

f:id:kakijiro:20160323115702p:plain「(ストレスで変形…?)」

 

 

続きは後編をご覧ください!

 

イラスト:マキゾウ(【実録】フリーランスの「孤独」すぎる日常 

 

 

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