タワー最後の秘境「東京おみやげたうん」へ

ここで、先ほど話に出た「東京おみやげたうん」に行ってみた。東京タワーでもっとも昔ながらの空気が残る場所で、視界いっぱいにおみやげ雑貨が広がる、とびっきりの楽しい場所だ。

 

ここで東京タワー開業時からお店を構える最古参の「東京堂」で、3代目店主を務めるのが林由美子さん。母親が初代のころから東京タワーに親しみ、5年前から店長として活躍している。

 

東京堂店主の林さん

 

「コロナの影響は大きいです。おみやげたうんの来場者に限ると、8割くらい外国のお客様でしたから。平日8割、休日5割。ツアーのお客様も多かったので」

辰井「とすると、相当な打撃ですよね。前に来たときはもっと賑わっていたような……。上の公式のおみやげ屋さんは、もう少し人がいる感じだったんですけど」

「このおみやげたうんは、今や存在があまり知られていないっていうのが大きいですね」

辰井「端っこの、ちょっと地味な所にありますよね……」

「ちなみに売り上げは、9割減です

辰井「9割……!!」

「地方の方が来づらくて。春と秋が修学旅行シーズンなんですが、近隣で済ませてしまうようです」

辰井「そうか……次の春にはワクチンが広まって、東京へ来てもらえればいいですね」

「まずは、東京の方に来てほしいです。商店街に来るような感覚で、気分転換になりますから」

 

200~300円台の商品も多く、リーズナブル

 

昔ながらの趣が味わい深いキーホルダーも

 

実は生存競争に勝った「精鋭アイテム」が揃っている

辰井「どんな商品が売れますか?」

売れる商品しか置いてないので、置いてあるものは基本売れます

辰井「へえ。牧歌的に見えますけど、競争で勝利したものばかり置かれているわけですもんね。昔から変わっていなそうなものが目立ちますが……」

「歴史が長いので、入れ替わっている商品も多いです。残っているのはいい商品ばかりですよ

 

プロ野球・巨人軍の商品は今も地方からのお客さんなどに人気

 

辰井「その中でも、一番人気の商品ってなんですか?」

お客さんによって売れる商品は全然違うんです。東南アジア系の方はマグネットとTシャツが好きで、欧米系の方はこだわって日本らしさが出ているものが好きで。小学生は東京ってことにこだわず、自分が欲しいと思う龍の置物なんかを買います」

辰井「ニーズによって千差万別ですね」

「ですから、多くの方が手に取れるラインナップにしていますね。なので、コロナでいろんなところから来られなくなったのが大きくて…」

 

おみやげの王様、掛け軸もまだあった。いま見るとつい欲しくなる

 

辰井「おみやげを研究する山下メロさんが、『こんな貴重な場所は他にない』って言うんですよね。屋内にあって、すごくレトロなものがそろっていて、たくさんのお店が集まっているのは日本でここくらいだと」

「そうですね、それが東京に残っているのも、また貴重なのかも知れません」

辰井「コロナで大変な状況ですけれども、この場所が残って欲しい人は多いと思っています」

必ず復活するので。東京タワーって遠くにあって、皆さんがすごく勇気づけられているんじゃないかな、あの灯りを見てって思うんですけれども。中の人もがんばっているので、みなさん来てくだされば

 

お土産に買った、「努力」と「根性」のキーホルダー

 

東京タワーの中には、がんばる人たちがいた。

 

新旧を織り交ぜて、コロナ禍の不安な夜も光り続ける鉄塔。東京の生活に疲れたとき、これからもふと僕は東京タワーを見てしまうだろう。