はじめまして。ライターの須藤か志こと申します。

突然ですがみなさん、ここは何の施設か、わかりますか…?

 

 

『ドラえもん』の製造工場…?

 

『攻殻機動隊』に出てくる政府機関…?

 

実はここ…函館(はこだて)にある公立大学なんです!

 

この「公立はこだて未来大学」は、函館を、いや全国を代表するまさに「未来」の大学なんです。
どんなところが「未来」的かというと…

 

これ、ぜんぶウソのようなホントの話。

実はわたし、この大学に通っている現役大学生なんですが、毎日のように通っていても、頭に大量のハテナが浮かんでくることが多々あります。

聞くところによるとこの大学、実は創設までに様々な困難があったのだとか……。

そんな折、公立はこだて未来大学の開学に関わった先生にお話を伺う機会が!

それがこの美馬のゆり先生です!

 

美馬のゆり<プロフィール>

公立はこだて未来大学システム情報科学部教授。公立はこだて未来大学および日本科学未来館の設立計画策定に携わる。設立後は、大学では教授、科学館では副館長(2003-2006)を務める。NHK経営委員(2013-2016)のほか、中央教育審議会委員、科学技術・学術審議会委員、経済産業省の製品安全に関する審議会委員、北海道科学技術審議会委員などを歴任。

 

今回は美馬先生に僭越ながら、

・どうしてこんな建物になったの?

・函館に公立大学が作られた理由とは

・これからの大学のあるべき姿とは

などなど様々な疑問をぶつけさせていただきます!

 

公立はこだて未来大学ってどういうところ?

 

須藤「わたし自身、公立はこだて未来大学(以下未来大)の学生として、毎日通っているのですが、いまだに驚くことが多いんですよね」

美馬「初めて来た方は、特にこの校舎にまず驚かれますね」

 

函館に来た友人を案内するときに「未来大に行きたい!」と言われることがあるくらい特徴的な校舎(写真提供:はこだて未来大学)

 

須藤「攻殻機動隊の光学迷彩みたいでかっこいいですよね。どうしてこんな校舎になったんですか?」

美馬「わたしたちは、学びのスタイルを従来のものから変える必要があると思ったんですよ」

須藤「え、学びのスタイルと校舎のデザインに何の関係が?」

 

美馬「未来大には『オープンスペース、オープンマインド』というモットーがあるのですが、これが関係しているんです」

須藤「どういうことですか?」

美馬「従来の講義スタイルって、先生から学生へ知識を伝える一方通行のものが多かったんですね。未来大では、単なる知識の詰め込みよりも、対話を重視し、協調しながら学び合えるようなスタイルに変えていく必要があると考えました」

須藤「ほうほう」

美馬「そこで、教室の座席配置を従来とは異なるスタイルにして、ついたてや壁を取り払ったオープンな空間での講義を取り入れました。一般的な一斉講義型の教室だと、グループでの議論や活動がしにくいですよね

須藤「たしかに全員が一方向を向くような場所で話し合いをするのは難しいかも」

美馬「だからこのように校舎や教室がオープンな設計となっているのは、まず授業や学習のスタイルをイメージした上で、必要な空間を考えたからなんですよ」

須藤「ではあのガラス張りの校舎にもちゃんと意味があるんですね」

美馬「はい。校舎内は、教室の廊下側の壁が透明ガラスになっていたり、5階まで吹き抜けの大空間があるんですね。これはいろいろな授業や活動を見て、興味を持ってもらおうという仕掛けですね」

 

ガラス張りの演習室。ここでは1年生から大学院生までが課題に取り組んでいる

美馬「その中でも特に未来大らしい場所といえば、1階のプレゼンテーションベイです」

須藤「ああ、1階部分にあるあのくぼみですね。あれってただの飾りだと思っていたけど、何か意味があるんですか?」

 

一階部分にあるプレゼンテーションベイ。単なるくぼみじゃなさそうだが……(写真提供:はこだて未来大学)

 

美馬「このスペースは、上座や下座を無くすことで、参加者の上下関係などを意識させない作りになっています。プレゼンをする人も聴く人も対等な立場で、全員が等しく発言できるような設計になっているんです」

須藤「へえ……(ただのくぼみじゃなかったのか)」

美馬「このように未来大の教室は、一方的なプレゼンテーションにならない活動が生まれるように、空間設計がなされています」

須藤「あれ? でも未来大にはいわゆる一般的な講義教室もありますよね? 先生が前に立って、その向かいに学生がずらっといるような」

美馬どちらもあることが大切なんですよ。講義の内容によって適したスタイルの教室がありますから。そして学生にとっても、学習空間が多様でそれぞれ選べるようになっていることが重要です」

須藤「たしかに広々とした空間で議論したいときもあれば、一人で静かに勉強したいときもありますね」

美馬「そうですよね。わたしはこれを『はらっぱとすみっこ』と呼んでいます。大きく広々とした『はらっぱ』で学ぶことも、こぢんまりとした環境の『すみっこ』で集中することもどちらの居場所も必要だと思うんです」

須藤「なるほどなあ。『はらっぱとすみっこ』か」

美馬「『オープンスペース、オープンマインド』とは、空間を開放的にしたことで、人々の心がオープンになったことを表しています。つまり、学びに必要な空間を考えて実際に作ってみたら、空間には人々の心を変える力があることがわかったわけですね」

須藤「『こんな学びを実践したい!』と実践してみて、それに合わせて空間も設計していったからこそたどり着いたモットーだったんですね」

 

こだわりが詰まったオープンすぎる校舎

 

須藤「未来大には展覧会やワークショップを行うミュージアムや、工作ができるアトリエなどがたくさん揃っていますけど、ここにも何か理由があるんですか?」

美馬「ミュージアムは学生が課題の成果を発表する場所なのですが、『成果を展示する』だけでなく、『魅力的に見せる』ことも意識してほしいということですね」

 

正面玄関脇にあるミュージアムでは、学生が課題の成果物を展示している(写真提供:はこだて未来大学)

 

須藤「学生は、社会に対して披露する最終的な形まで意識して課題に取り組んだほうがいいってことか」

美馬「はい。そして工房やアトリエなどは、手を動かして創作できる場所です。理論だけでなく、実際に作ることによって学ぶものがあるという考えから設計された場所ですね」

 

工房には3Dプリンターやレーザーカッターがあり、学生が課題や創作に取り組んでいる(写真提供:はこだて未来大学)

 

アトリエでは工作やデッサンをしている学生をよく見かける(写真提供:はこだて未来大学)

 

美馬「ミュージアムや情報ライブラリなどは、未来大の入り口である正面玄関前に配置しました。これは学外の方が未来大の活動に触れる機会をたくさん作るための、いわば社会とのインターフェースとして機能させたかったんです」

須藤「インターフェース?」

美馬「主にIT用語として使われている言葉なのですが、この場合は学内と学外を結びつける役割ですね。ミュージアムや情報ライブラリには、そんなインターフェースとして、大学で学生がどんな活動をして、何を学んでいるのかということを函館市民の方に知っていただけるような機能を持たせられればと」

 

中が丸見えの情報ライブラリ。正面玄関前が入り口で、地域の方も利用できる

須藤「なるほどなあ。たしかに学生の活動が見れる場所が入り口近くにあると、大学に興味が湧きやすいかも」

美馬「未来大は『公立大学』として、地域とのつながりが重要だと考えています。函館市民との接点も意識しながら、各施設を配置しました」

 

函館で初の公立大学、開学までの長い道のり

須藤「でもどうしてこんなすごい公立の大学が函館にあるんですか? 正直すごく不思議で」

美馬「函館市は長年にわたり、国立大学を誘致しようと準備していたそうです」

須藤「ん? 函館にはすでに他に私立の大学も揃ってますよね? わざわざ新しく作らなくてもいいんじゃないかと思うんですが……」

美馬「北海道の都市には、それぞれ特徴のある国立大学があるんです。札幌なら北海道大学、旭川なら旭川医科大学、室蘭には室蘭工業大学など」

 

国立大学が国を中心とする「国立大学法人」が運営するのに対して、公立大学は都道府県や市などの地方自治体を中心とする「公立大学法人」が運営している

 

須藤「確かに北海道各地に特徴のある国立大学がありますね」

美馬「函館にも北海道大学の水産学部がありますが、市としては函館単独で、特徴ある国立大学が欲しかったんですね。ただ、もう国立大学は作らないと文部省(現在の文部科学省)が発表したので、市で運営することができる公立大学を自分たちで作ろうということになったわけです」

須藤「大学のDIY……!でも、日本はいま少子化なので、大学を作っても学生はなかなか入らないんじゃないですか?」

美馬「そうですね。少子化が進んでいく中で、新しい大学を作る必要がある学部として当時文部省が認可したのは、『地域・国際政策系』『医療看護系』『情報系』のいずれか。そこで函館市は、情報科学を軸に据えた大学を作ろうと決めたんです」

須藤「なるほど。でも大学づくりって全然イメージがつかないです。きっと大変なんでしょうけど……」

美馬「そうですよね。わたし自身も大学づくりにまさか自分が関わるなんて、思っていなかったんですよ」

須藤「そうだったんですか?」

美馬「はい。恩師に『函館市の大学づくりに意見を述べてもらえないか』と声をかけていただいたのがきっかけです。そこから、いつの間にか大学づくりプロジェクトに参加し、開学後は家族で函館に移住することになりました」

 

須藤「いつの間にか大学づくりプロジェクトに参加してるってどういうこと……?」

美馬「ちなみに最初の会議からいたその七人のメンバーのことは、『七人の侍』って呼んでます」

須藤「呼び名がかっこよすぎる」

美馬「そんなわけで大学をイチから作りはじめたのですが、わたしたちが関わり始めた頃、『予算』『2000年に開学』『情報系の大学』という条件は決まっていました。この他にもいろいろな制約があったんです」

須藤「どんな制約ですか?」

美馬「例えば当時の大学設置を認められる条件として『これくらいの規模の大学を作るにはこれくらいの土地がいる』『図書館の本はこれくらい必要』だとか、かなり厳しいことを言われました」

須藤「本の数まで!」

美馬「わたしたちとしては、せっかく大学を作るのだから、もっと中心市街地に作るとか、あるいは今の場所の周りに市立図書館などの文化施設も併せて作って、市民が多く足を運ぶ文教地区にしたかったのですが、それは叶いませんでした」

※文教地区:教育施設が多く集まっている地区の呼称。 学校・図書館・博物館などの施設が集まっている地域を指す。

 

須藤「なるほど。だからこの立地にあるわけですね」

 

未来大は市街地から数キロ離れた丘陵地にある

 

須藤「でもそんなにたくさん制約があったのに、こんな大学ができたのって本当にすごいことですよね」

美馬むしろ予算が潤沢にあるだとか、制約がまったくない環境だったら、あまりアイデアは出てこないと思うのです。制約があるからこそ考えるし、知恵を出し合っていいものを作ろうとするんですね」

須藤「なるほど。たくさんの制約が、逆にアイデア満載の大学になった理由なのか」

美馬「もちろん制約だけではありません。函館は歴史や文化的遺産、自然環境が豊かな土地です。そんな土地にせっかく新しく大学を作るのに、どこにでもあるようなものにしてもしょうがないですよね」

須藤「土地の持つ力もモチベーションになったんですね」

美馬「はい。なので、わたしたちは既存の情報系の大学を調べつつ、『自分たちが大学生だったらどんな風に学びたいか』『世界は今後どんな人が活躍していくようになるか』など、これからの大学のあるべき姿を徹底的に議論しました」

須藤「議論って…開学に携わった皆さんは函館にいらっしゃったわけではないんですよね?」

美馬「そうですね。当時はメンバーは大学や研究所などで働いていたので、平日の深夜にはメールで、週末には都内で集まって朝から晩まで議論。開学まではそんな毎日でしたね」

 

難関校ではないのに「優秀」と呼ばれる理由

須藤「ところで、地域の方に未来大の学生だと話すと、優秀だと言われることが多くて。でも正直、ピンとこないんですよね」

美馬「ああ、やっぱりよく言われるでしょう?函館の人って未来大のことをとても頭がいい、難しい大学だと思ってらっしゃる方が多いんですよね」

須藤「もちろん優秀な先生や学生が多いことも承知の上ですが……全国的に見れば偏差値はそこまででもないですよね?」

美馬「そうですね。正直、未来大の偏差値は全国的に見ても高いほうではないのですが、そこはあまり気にしていないんです

須藤「えっ、なんでですか?」

美馬「偏差値はこれまでの日本の価値基準、入試制度に沿ったものです。ですが、わたしたちは過去のものを重視するのではなく、これからの時代に必要な力をつけていく学びを意識しています」

須藤「これからの時代に必要な学び…? 具体的にはどんなものなんでしょうか?」

美馬「例えば3年生のときには、他の授業と並行しながら、1年かけて『システム情報科学実習』※を受講します。これは、異なるコースの学生が混じり合ってチームで取り組むプログラムです」

 

※こうしたプログラムはPBL(Project-Based Learning)と呼ばれており、知識の暗記などのような受動的な学習法ではなく、学生が自ら問題を発見し解決する力を養う主体的な学習法。答えにたどり着くまでの過程が重要であるという学習理論がもとになっている。

 

須藤「『システム情報科学実習』かあ。ありましたね」

美馬「未来大の『システム情報科学実習』では、地域をフィールドとしたプロジェクトや、企業と連携するプロジェクトが多いのが特徴です。それぞれの専門知識を活用しながら、実社会にある課題を解決していく方法を学生のうちから学ぶことが、社会に出てからの強みになります」

須藤「大学にある『IKABO』も『システム情報科学実習』で制作されたんでしたっけ?」

 

校内でも目を引く存在の「IKABO」。函館名物「イカ踊り」に参加する未来大生は、この「IKABO」と一緒に踊っているぞ!

 

美馬「そうそう。『IKABO』は函館らしいイカの形をしたロボットです。函館市民にも『IKABO』を通して未来大、そこから情報科学、ロボット工学などに興味を持つきっかけになるのではないかと思います」

 

五稜郭タワーで開催された情報デザインコース卒業研究展覧会函館展の様子。地域住民の方がたくさん見に来てくださいました(提供:千葉康貴)

 

須藤「イカの形のロボットが踊っていたら、市民の方も興味津々でしょうね。でもなぜロボットを作ることができるような研究者が集まったんでしょう?」

美馬「あるとき同僚の人工知能研究者・松原仁さんに、函館で人工知能を研究することの意義を聞いたことがあったんです。そのときの答えが、『函館は日本が抱えている社会課題が凝縮されたような街。だからこそ、この土地で研究をすることが、日本のほかの地域の課題も解決することにつながる』というもので」

須藤「社会課題が凝縮された街?」

美馬「例えば、少子高齢化、教育や経済格差。それから海洋環境の変化で、函館のイカ釣りなど、漁業や水産加工業にも影響が出ています。函館では様々な分野で課題が山積みなんです」

須藤「言われてみると確かにそうですね……。でも、それと人工知能などの情報科学がどう繋がるんですか?」

美馬「未来大の専門分野である情報技術、いわゆるITは、現在社会において重要なインフラとなっています。そのため、医療や交通、産業など、あらゆる分野に関係しているんですね。だからこそ情報技術を用いて、地域課題の解決策を探っていくことができるんです」

須藤「では実際に、地域課題と結びついたプロジェクトが動いているんですね」

美馬「はい。例えば漁業では同僚の和田雅昭さんを中心に、『マリンITと呼ばれる取り組みをしています。これは情報処理技術を駆使して、水産資源と海洋環境のデータを活用した新しい漁業のあり方を、現場と共に研究開発しているものですね」

須藤「現場と共に動くプロジェクトが実際に…!」

美馬「このマリンITは国内だけでなく、東南アジアなどにも広がりつつあるんです」

須藤「函館だけではなく、世界にまでプロジェクトが広がっているんですね!」

美馬「このマリンITだけでなく、函館での研究成果は他の地域にもモデルケースとして提供できるようにしたいと考えています」

須藤「おお!もうすでに函館以外の方は『函館に根ざした研究が多い』と面白がってくれている印象があります」

美馬「わたしも、函館以外の方からも評価をしていただいていると感じます。去年未来大のことについて、教育関係の国際学会だけでなく、科学コミュニケーションの国際学会でも招待講演をしました。他にも、国内外から招待を受け、お話しをさせていただくことが最近増えてきました」

須藤「招待講演!?引っ張りだこじゃないですか!」

美馬「外からどう思われているのかに自覚的になることで、自分たちの強みを理解できたり、視野が広がるので、身近なものを見直す機会になりますよ」

須藤「地元のものって当たり前すぎて、逆に価値が見えづらくなっているのかもしれませんね。わたしも函館に引っ越してきてから、自分の地元の面白さに敏感になりました」

美馬「そもそも未来大は公立大学なので、地域の価値を発見して発信したり、課題を解決することが重要な使命の一つです。そのためにも、外部への函館の魅力の発信は大切なんですよ」

 

20年後の函館を目指して

美馬「実は未来大では、数年前までは入学者は北海道出身の学生が7割程度だったんですが、今では5割くらいが道外出身者になっています。大学院では東南アジアやヨーロッパからの留学生も増えてきています」

須藤「そうなんですね!たしかに、わたしの友達でも遠く本州から来ている友だちは多いですね。留学生もわたしの研究室にも数名配属されていました」

 

美馬「それってすごくいいことだと思うんです。いろんな地域で育った学生が集まると、多様な意見や価値観が出てくるので、面白くなるんですよ。都内の大学に勤める友人は、『首都圏出身の学生が多く、生まれ育った環境にあまり差がないので、ディスカッションをしても異なる価値観があることに気づきにくい』と嘆いていました」

須藤「学生自身がひとり一人の価値観やバックグラウンドの違いを面白がれることが大事ってことですね」

美馬面白がることだけではなく、価値観やバックグラウンドの異なる人と協力して、地球全体の課題を解決していく必要があることを意識しなければならない時代です。SDGs(持続可能な開発目標)などの大きなテーマにも目を向けて、価値観の異なる人と協力して課題に取り組める学生を輩出したいですね

 

SDGs(持続可能な開発目標)とは、国連が定めた2016年から2030年までの期間における17の国際目標。発展途上国から先進国までが、この目標を達成するために取り組みをおこなっている

 

美馬今後は、開学から18年間で培ってきた未来大の学習活動を、大学だけではなくて、小・中学校や高校でも活かしていきたいと思っているんです」

須藤「おお! すでに動かれているのですか?」

美馬「今は子ども向けのワークショップの依頼を単発で受けることが多いのですが、一回きりではなく、長く『函館の未来の教育のあるべき姿』を意識しながら、仲間の輪を広げつつ、やっていきたいと思っています」

須藤「そんな教育を受けた子どもたちが何年か後に未来大に来たらと思うと、ワクワクしますね!」

美馬『とりあえず』のものだけではなくて、長い目で函館の未来を考えたときに、未来大はもっと関われる場面があるんじゃないかと思っています。だからこそ、函館市にはもっと未来大を活用してほしいです」

須藤「いま以上に函館と未来大とが連携できたら変わっていけることがありそうですね……!」

美馬「長く培われてきた歴史や文化がある街ですし、すぐに何かを革新的に変えることは難しいかもしれません。でも、みんなで20年後の函館の姿を見据えながら活動していくことは今からでもできる。そして、そこでは絶対に『学びのイノベーション』は必要なんです」

須藤「20年後の函館……一体どんなふうになっているんだろう」

美馬「未来大も開学から20年ほど経ちました。校舎の使い方、授業の内容、そして学生たちのあり方も変わってきています。これからさらに変わっていくこともあるだろうし、変わらないものもある。未来大が、そして函館がどうなるかわからないからこそ、まだまだ未来大を仲間とともに作り続けていきたいと思います」

 

まとめ

多くの社会課題を抱える地方都市・函館。

自分たちがアクションを起こさなければ衰退の一途をたどることになったかもしれない地方都市で、大学を作ることは容易ではなかったことがお話から伺えました。
でも、それを「大変だった」と過去のこととして扱うのではなく、「まだ大学づくりは途中」だと美馬先生は語ります。

20年後の函館がどうなっているのか、日本がどうなっているのか、それは誰にもわかりませんが、自分たちの手で作っていくことは可能です。

そしてそれは今からでもできること。

「何もしなければ何もおこらない」ところから行動を起こし、「なんとかなるかもしれない」へ。
そして「こうあるべきだ」という未来を徹底的に追求すること。
それを力強く進めていく尊さを、インタビューを通して改めて感じました。

 

写真:八重樫 啓明