こんにちは。ライターの坂口です。
本日はこちら、千駄ヶ谷にある「東京頭痛クリニック」に来ています。

 

低気圧の日や生理の日に私たちを襲う、にっくき「片頭痛」。 対策を調べてみても、ネットには「天候と頭痛は関係ない」とか、「鎮痛薬に頼りすぎると効かなくなる」とかいろんな説が溢れすぎていて、もはやどれが正しい情報なのかよく分かりません

 

そこで今日は、頭痛の専門医に気圧の変化や生理のときに起きる片頭痛を中心に、原因や対策、ほかの頭痛との見分け方、予防法などを聞いていきます!

 

この記事は、下記の構成でお届けします!

 

①片頭痛はどうして起こる? その原因はたった一つ

②片頭痛だと分かったら、あの場所を冷やすべし

③片頭痛と間違えやすい「緊張型頭痛」と「薬物乱用頭痛」

④よくある頭痛と危険な頭痛。みんな、我慢しないで病院行こうな!

 

今すでに片頭痛で苦しんでいる!すぐに対処法を知りたい!という方は、2章から。

普段から片頭痛に苦しんでいる方は最初から最後まで通しで読むと、片頭痛を中心とした頭痛への理解と対策法がスコーン!と頭に入ってきます。

それではめくるめく頭痛の世界へ、いってらっしゃいませ。

 

※記事の内容は2019年7月の公開当時のものです

片頭痛はどうして起こる? その原因はたった一つ

篠原先生:東京頭痛クリニック 院長(※取材当時)。日本頭痛学会専門医。中身も外見もインテリジェンスに溢れているが、趣味は「武道」。今はキックボクシングにはまりジムに通っているという驚異の文武両道マンである。

「先生、今日は人類の敵『片頭痛』から解放されたくてここに来ました。私自身、気圧の変化でよく頭が痛くなるんですが、あれはどうしてなんでしょう?」

「片頭痛は、血管の拡張と脈の促進が原因で引き起こされます」

「えっ。片頭痛の原因って、低気圧とか生理とかじゃないんですか?」

「気圧や生理、激しい運動などは片頭痛を起こす『きっかけ』のひとつであって、原因ではありません」

「『きっかけ』と『原因』は別物……!?」

「はい。片頭痛の直接的な原因は、さきほどもお伝えした通り、血管が膨張して神経が圧迫されることによります。だから片頭痛の場合、ズキンズキンと痛みが走る『拍動性の頭痛』が起こるんですよ」

 

〈片頭痛が起こるメカニズム〉

つまり、低気圧の日に起きる片頭痛も、生理の日の片頭痛も、強い日差しに当たって起きる片頭痛も、激しい運動で起きる片頭痛も、元をたどると原因は同じなのだそう。

 

よくある片頭痛のきっかけから、どういう仕組みで痛みが起きているのか、教えてもらったことをざっとまとめてみました。

 

「当院では、5月から9月にかけて患者数が大幅に増加するんですが、おそらく梅雨時期の低気圧、夏の日差しと気温変化、秋の台風などがきっかけになっているからではないかと予測しています」

「頭痛になって『おっ、低気圧かな』と、気圧を確認してもそれほど低くなくて『あれー??』となるときがあったんですけど、そういうことだったのかぁ」

 

ほかにも、意外なことが片頭痛のきっかけになることも……!

 

たとえば、「寝すぎ」。

規則正しい生活をしないと血管が広がりやすくなるうえ、休日は心身のストレスから開放されていつも以上に血管が広がることがあります。「休日の寝だめ」は、片頭痛を起こす可能性が高くなるので注意!

 

また、「昼寝」も長くとりすぎると頭痛を引き起こしやすくなるとのこと。

脳が一度熟睡モードに入ると、血管が広がって心拍数もゆるやかになります。昼寝から目覚めてすぐに活動すると、血管が広がった状態のまま心拍数が元に戻るので、痛みを引き起こしやすくなるのです。昼寝は30分以内に止めるようにしましょう!

 

さらに、神経が過敏な方は「光・音・におい」によっても、神経が刺激されて血管が広がり、片頭痛になることがあります。特に蛍光灯の白い光は刺激になりやすいので、頭が痛くなりやすい方はお家の照明をやわらかな暖色系にしてみるのもオススメ!

東京頭痛クリニックの診察室も、あたたかみのある照明を使用していました。

 


頭痛が起きた日時や痛みの程度、内容などを書き留められる「頭痛ダイアリー」

「片頭痛のきっかけはひとつとは限りません。また、複数の要因が重なることで、症状が強くなることもあります。そこでオススメしたいのが『頭痛ダイアリー』を書くこと。これで自分の頭痛のパターンがわかると、対策しやすくなるはずです」

 

片頭痛だと分かったら、あの場所を冷やすべし

さて、原因がはっきりしたら、お次は対処法です。片頭痛を発症したあとに自分でできる対策や、ほかの頭痛との見分け方、さらには片頭痛の予防法についても教えてもらいました。

「片頭痛のきっかけはいろいろあれど、原因は同じ……ということは、分かりました。『今まさに痛い! すぐ治したい!』というときは、どうすればいいんでしょうか」

薬を飲むことでしょうね。『トリプタン製剤』という、広がった血管を元に戻してくれる片頭痛の特効薬があるので、それを飲むのが一番いいと思います」

「手元に薬がない場合はどうしたら……」

「部屋を暗くして静かにすることと、酸素をいっぱい吸うこと。調子が悪いときって生あくびが出るじゃないですか。あれは、体が本能的に酸素を欲しているからなんです。酸素をとると血管が狭くなって、楽になるんですよ』

 


希望制でMRI検査も可能です(頭に関わるので、ほとんどの方が一度は撮るとのこと)

「手元に薬がなくて、部屋を暗くして静かにすることも難しい場合。たとえば、仕事中でもすぐにできる対処法はないんでしょうか?」

「それなら……、首の真後ろを冷やすといいですよ。そこに片頭痛の出口があるといわれていて、痛みがひどいとそこが硬くなるんです。この場所を冷やすと、楽になりますよ」

「それなら仕事中でもできそうです!」

「気を付けてほしいのは、頭が痛くてもこの場所をマッサージしてはいけません。副交感神経が優位になって血管が広がり、さらに痛みがひどくなってしまいます。ちょっと横にずれたとこなら大丈夫ですけどね」

 


先生が指差すところが「ここならマッサージしても問題ない」というツボ

「ただ、これらは片頭痛の場合の対処法です。肩こり・首こりが原因で起こる『緊張型頭痛』は温めたほうが楽になるので、間違えないよう注意してください」

 

片頭痛と間違えやすい「緊張型頭痛」と「薬物乱用頭痛」

「先生、いま新しい頭痛が出てきましたね?? 『緊張型頭痛』は『片頭痛』とどう違うのでしょう?」

『緊張型頭痛』は、身体的・精神的ストレスによる筋肉の緊張が引き起こす頭痛です。そのため片頭痛では厳禁の入浴や飲酒も、緊張型頭痛の場合は筋肉がリラックスするので痛みの緩和にひと役買ってくれるんです」

「対処を間違えてさらに痛みが強くなってしまったら最悪だ……。『片頭痛』と『緊張型頭痛』を見分ける方法はあるんですか?」

「見分け方はいくつかありますが、体を動かして楽になる場合は、緊張型頭痛であることが多いですね。逆に、頭を振ったり下に向けたりして痛みが増したら、片頭痛じゃないか? と判断していきます」

 

「ほかにも片頭痛と間違えやすい頭痛があったら教えてください……!」

頭痛薬の飲み過ぎによる『薬物乱用頭痛』ですね」

「頭痛もちの人にとって、救世主であるはずの薬が原因の……頭痛!?」

「そうなんです。薬を3ヶ月以上、月に10日以上飲むと引き起こしやすいといわれています。とくに市販の頭痛薬をよく飲んでいる人は、知らず知らずのうちに発症していることもあるんです」

 

「1週間ほど薬をやめればパッとよくなる頭痛なのですが、独断で断薬するのはかなりキツいので、まずは来院することをオススメします」

「先生、『薬物乱用頭痛』と『片頭痛』を見分けるにはどうしたらいいでしょう?」

「『薬物乱用頭痛』は、毎朝決まって頭が痛くなります。一方の『片頭痛』は一回完結型。発症は多くても週に数回・月に何回という頻度で、毎朝起きることはありません」

 

〈頭痛の見分け方と対策まとめ〉

 

先生、片頭痛を予防する方法はないの……?

「片頭痛を事前に予防する方法はないんでしょうか? 日差しやアルコールはある程度自分でも対策ができますが、低気圧や生理はどうすればいいのか……」

「血糖が下がると血管が広がるので、ちょっとした糖分をとっておくほうがいいですね。また、血管のむくみを抑える成分『マグネシウム』が入っている食品もいいといわれています」

「マグネシウム……」

「身近なものだと大豆、ひじき、ごま、アーモンドなどに多く含まれていますね。ただ、それだけで完全に予防することはできないので、基本的には薬を常用して防ぐことを考えていただければ……!」

 

「ちなみに、邪馬台国を治めた女帝・卑弥呼は『神からのお告げ』で、雨が降る日を予測できるとして崇められていましたが、実は重度の片頭痛持ちだったのでは?と、頭痛を研究している人たちの間ではいわれていて」

「えー!!!!! あの卑弥呼も、まさかの片頭痛もち!?」

「あくまで憶測ですけどね。雨の前日に頭痛がしたから予測できたのではないかと、一部の研究者たちの間では噂になっています」

「もしそれが本当なら、歴史の教科書が変わってしまう……!」

 

みんな、頭痛は我慢しないで病院行こうな!

最後に、よくある症状や特に注意したい頭痛について教えてもらいました。

下に行くほどリスクが高いので、当てはまる人は我慢せず早めに病院へ行きましょう!

 

危険性はないけれど、意外と多いズキンとした頭の表面の痛み

ふとした瞬間に、頭の表面に「ズキン!」と走る痛み。東京頭痛クリニックにも同じ症状の患者さんが多くいらっしゃるそうですが、それは頭痛ではなく「神経痛」かもしれません。

 

痛みを起こしているのは、「大後頭神経(だいこうとうしんけい)」という頭の神経。ただ、神経は身体中に張り巡らされているので、ほかの場所に痛みが移動することもあります。

「原因は、姿勢の悪さや寒暖差。オフィスのクーラーに当たりながら、悪い姿勢で仕事していると起きやすいものです。危険視する必要はありませんが、体を冷やさないように対策をしてもツラい場合は、予防薬もあるので来院をオススメします」

 

目玉がえぐり取られるように痛む「群発頭痛」

1〜2ヶ月ほどの期間に集中し、目玉がえぐり取られるような激しい頭痛が続くのが、「群発頭痛」。特に男性に多く見られる頭痛で、ホルモンの関係ではないかといわれています。

「目の前に拳銃があったら、自分の頭を打ち抜いてしまいたくなるほどの痛みが伴うことから『自殺頭痛』とも呼ばれます。相当な痛みのはずなので、ぜひ病院で予防の薬や痛み止めなどをもらってください」

「『自殺頭痛』だなんて、物騒ですね……!」

「ちなみに、群発頭痛と片頭痛両方ダブル持ちの当院の理事長は、家族でハワイ旅行中に夫婦揃ってこの頭痛を発症してしまい、楽しみにしていたスキューバダイビングもできずに、部屋でひたすら寝ていたそうです」

「めちゃめちゃかわいそう」

 

ちなみに篠原先生は、頭痛持ちではないそうです

 

煩悩払うもほどほどに……「椎骨動脈の亀裂」


模型の赤い部分が「椎骨動脈(ついこつどうみゃく)」

「後頭部の痛みを訴えて来院した患者さんのMRIを撮ったところ、首の後ろにある椎骨動脈が裂けていたことがありました。原因は、血圧の上昇による動脈硬化で」

「動脈硬化……!! ということは、ご高齢の方だったんですか?」

「いいえ、20代の女性でした。聞けば滝行が趣味で、滝に打たれながら大きな声で叫ぶ修行の後に、頭が痛くなったようなので、滝の中で叫ぶのは控えたほうがいいでしょうね」

「絶対にやりません」

女性は気を付けて!片頭痛が起きる前に光が見える「閃輝暗点」

片頭痛が起きる30分ほど前に、ギザギザした光が見える女性は注意してください。「閃輝暗点(せんきあんてん)」と呼ばれる症状のある人がピルを飲むと、血栓ができやすく脳梗塞を起こしやすいのだそうです。

「最近は婦人科でも認知が広がり、処方の前に血液検査をしてくれるところもありますが、まだまだ多くはありません。脳梗塞は命にも関わる病気です。『片頭痛の前に光が見える』という方は、必ず一度、専門医にかかってくださいね」

「『頭痛』といっても、危険性の低いものから命の危険に関わる恐ろしいものまで、いろいろあるんですね……! でも世の中の認識では、まだまだ頭痛は『大したことじゃない』と思われているように感じます。そうした風潮について、篠原先生はどう思っていますか?」

「軽く見られがちな頭痛ですが、その種類は350種類以上もあるんです」

「350種類!? めちゃめちゃあるじゃないですか」

「そのなかでさらに、一次性頭痛と二次性頭痛に分けられます。

一次性は、片頭痛や緊張型頭痛などあまり命に関わらないもの。二次性は、脳腫瘍や脳出血、脳梗塞など、命を落とす危険がある病気の症状として現れるものです」

 

「二次性頭痛の場合、対処によっては後遺症が残るなど取り返しがつかないものもあります。頭痛を軽く捉えず、できれば一度、専門医がいる病院で原因を明らかにしてほしいですね。もし大きな病気が見つからなくても、不安が晴れるだけでも気持ちが楽になると思いますので」

「今は頭痛外来も全国で増えていますし、頭痛専門の『東京頭痛クリニック』さんもありますしね! 心強いです! 今日はお話を聞かせていただき、どうもありがとうございました!!」

 

頭痛で悩んでいるのに「頭痛ぐらいで休めない」と、仕事や学校生活を我慢して送っている人は少なくないはず。

 

しかし、篠原先生のいう通り、頭痛とはいえ命に関わる病気の可能性もあったり、薬を飲んでやり過ごすことで新たな病気(薬物乱用頭痛など)の種を生む可能性もあったりと、我慢することのリスクもあるのです。

 

「頭が痛いな〜」と思ったときは、自分を責めずに、ぜひゆっくり休みをとったり、病院に行ったりしてくださいね!

 

あっ、あと必要がないのに頭を激しく振るのは控えましょう。

たとえばこんな風に……

 

うおおおおおおおおああああ 

 

あああええええええああああ

 

おあああああああああいッッ

 

っと、激しく頭を振ることで、片頭痛の原因である血管の拡張と脈の促進を誘引してしまう可能性があると先生が教えてくれました。

それに、頭を振っている途中でどこかに頭をぶつけでもしたら、脳を囲む膜『髄膜(ずいまく)』が破けて、頭の中の『髄液(ずいえき)』が流出し、激しい頭痛の原因のひとつである『低髄液圧(ていずいえきあつ)症候群』を引き起こす恐れがあるうえ、髄膜の穴が開いた部分に自分の血液を貼るという特殊な治療が必要で、その治療費は数万円では収まらない……とのことです。

 

それでは、またお会いしましょう。

 

▼取材協力
東京頭痛クリニック
http://www.tokyoheadache.jp/

 

▼イラスト

小松佑 Instagram:@tskkkx