「秘湯」ってなんとなく、遠いしハードル高いしどこがいいのか分からない…そう思っていませんか? いやまあ、正直わりと遠いんですけど…でも、いいんですよ秘湯。

最高の温泉にひっそりと浸かるためだけに、行ってみませんか…!

 

フィ~~~!

 

唐突にすみません、とある温泉旅館から失礼します。温泉オタクのながちと申します。これまで訪れた温泉は約400。稚内から屋久島まで、さまざまな温泉に浸かってきました。

 

オタクを公言しているためか、「東京から1泊2日、おすすめの温泉は?」とめちゃくちゃ聞かれます。年齢より出身地より聞かれます。本記事ではその質問への、私の個人的な願いがこもった解答を書いていきたいと思います。

 

温泉オタク的にはぜひ「秘湯」に行ってもらいたい

「秘湯」の意味を大辞林で引くと、「人にあまり知られていない温泉」とあります。

山奥にある一軒宿は、確かに気軽に行けないかもしれません。でも、そこに宿が残っているということは、それだけすばらしい温泉が湧き続けていて、わざわざ訪れるファンが絶えないということ。

 

個人的にはそういうところもぜひ浸かって、くったり癒やされたり、秘湯の持つ浴感やにおいや雰囲気に驚いてくれたら嬉しいなあと思います。

 

とはいえハードルが高いので、今回は「コミコミ3万円」で3カ所を選出しました。ゆるゆる電車や路線バスに乗って行ってみてください。

 

青白い鹿股川にせり出た、秘湯露天――栃木・明賀屋旅

栃木屈指の温泉郷・那須塩原。あちこちに素晴らしい温泉が湧いていますが、秘湯感たっぷりなのが明賀屋旅館です。

大正ロマンあふれる太古館と、すべて絨毯敷きの上品な本館があり、立派な大きめ旅館といった印象。こちらの魅力はやっぱり、めちゃくちゃに開放的な露天風呂でしょう。

 

いまも一部が客室としても使われる太古館

 

川岸の露天風呂へは88の階段を上り下りせねばならず、それだけでも結構な運動量になります。山肌に沿って組み立てられた階段沿いには、古くは湯治場として親しまれた廃屋もあり、なんだか最初は探検気分でした。

 

露天風呂は鉄味と塩気があり、パリパリしていて軽やかだけど、しっかり体に染み込む重めな温泉。とにかくこのロケーションが最高。

青白い鹿股川を横目に、ふうと一息。吸い込まれそうな川下を眺めながら、なんだかものすごいところまで来てしまった…、そんな気持ちになります。秘湯の醍醐味ですね。

 

88の階段。食後や飲酒後なら、ちょっと時間経ってからのほうがいいかも

 

源泉はふたつあり、内湯にある温泉は、震災の際に新しく湧き出た「新湯」。やや墨色でぬるめ。露天とはまた異なるつるつる浴感でした。

 

客室の窓の向こうはもう、緑が迫ってきていました

 

食事は太古館で。大広間の静けさが心地よい

 

夕食は「旅館メシ」で、小さな美味しいものがちょこちょこ置かれた会席料理です。栃木の名産・ヤシオマスがとっても美味しい。やわらかくて優しくて、山の宿ならではの川魚料理でした。

 

1泊2日2食付きプランは12,960円~。浅草駅から東武特急リバティ会津で上三依塩原温泉口駅へ(往復8,380円)。三依塩原温泉口駅からゆ~バスに乗り、塩原塩竈で降ります(往復400円)。合計21,740円~

宿泊プランや時期により値段が変わります。

 

明賀屋本館

所在地|〒329-2921 栃木県那須塩原市塩原353

電話番号|0287-32-2831

公式HP

 

南アルプスに湧くぬるとろ秘湯――山梨・奈良田温泉 白根館

山梨県の西部、南アルプスの山懐に抱かれた奈良田温泉 白根館平日でも満杯になるほど、世の温泉オタクを熱狂させる温泉が湧いています

やや開かれた山道沿いに唐突に現れる白根館は、建物は近代的で入りやすく、ほっこりする落ち着いた雰囲気が漂っています。

 

「日本秘湯を守る会」の提灯がお出迎え

 

総ヒノキの湯船に、ドボドボ注がれる極上温泉

 

南アルプスの大自然を遠くに見つめながら、チキチキ鳴く野鳥の声を聴きながら、ずぶりと体を沈めれば…まず、浴感というか肌触りに、ものっすごい衝撃を受けると思います。ぬるぬるでとろとろ。もはや、ねばねばといってもいいでしょう。まさに「全身美容液」

旅路の長さや疲れをあっという間に忘れてしまいます。

 

湯船から温泉がどんどん溢れ出ていて、新鮮そのもの

 

奈良田温泉は「七不思議の湯」といわれ、「万病に効く」「若返る」「子宝に恵まれる」など、さまざまな言い伝えがいまも残っています。

昔の人がわざわざここまで足を運んだ理由は、この湯に入れば納得。硫黄のにおいがほんのりしていて、やや緑みがかった色湯でしたが、その特徴は時間帯や天気によってくるくると変わっていきます。

ずっと入って、変化を楽しんでいたい不思議な温泉でした。

 

素朴ながら居心地のよい客室。電波も入る

 

どれも美味しかったけど、ニジマスの燻製が最高だった

 

夕食は「山人料理」と題されていて、ジビエや川魚など、その土地ならではの味覚が揃っていました。揚げ蕎麦がきも美味しかったなあ。

 

1泊2日2食付きプランは12,000円~。新宿駅から特急あずさで甲府駅まで行き、特急ワイドビューふじかわで下部温泉駅へ(往復10,020円)。下部温泉駅からはやかわ乗合バスに乗り、奈良田温泉で降ります(往復1,600円)。合計23,620円~。宿泊プランや時期により値段が変わります。

 

奈良田温泉 白根館

所在地|〒409-2701 山梨県南巨摩郡早川町奈良田344

電話番号|0556-48-2711

公式HP

 

足元から湧く、情緒あふれる秘湯――群馬・法師温泉 長寿館

群馬・猿ヶ京・三国温泉郷の一番奥にある法師温泉 長寿館は、個人的には「関東で最も有名な秘湯」といっても過言ではないと思います(前述した定義から早速外れていますが、感覚的に)。湯場の写真をみて、「あーここか」と感じる方も少なくないのでは…?

※法師温泉 長寿館からはお写真をお借りしてご紹介しています。

 

川端康成など多くの文人墨客に愛された老舗旅館です

 

映画「テルマエ・ロマエ」などロケでも多数使われています

 

写真から全力で伝わる、趣、そして情緒。

国登録有形文化財に登録された本館・法師乃湯は、明治時代に建てられたもの。ピリリと張った空気、圧倒的なたたずまいにもう、ため息が出ちゃいます。

 

この法師温泉 長寿館が愛され続けているのは、雰囲気だけでなく、温泉も最高だからなんですよ。

 

「玉城乃湯」。ヒノキと温泉のにおいがもうすばらしすぎて

 

約43℃の源泉かけ流し。湯船は割とぬるめなので、長湯してしまいそうです。特に推したいポイントが、ここは湯船の底から温泉が湧いている「足元湧出」状態あること。生まれたての温泉が、ぷくりと湧く瞬間を、目で、鼻で、肌で感じられます。

 

無色透明でキュキュッと弾く、浴感つるつるな温泉。ほのかに硫黄のにおいと鉄味、植物のにおいもありました。

メインの湯場は混浴で、女性専用時間が設けられています。雰囲気だけでなくぜひ温泉の素晴らしさも体感してもらいたいです。

 

ひとつひとつが美しくて、もう「たまらん」の一言です

 

地産のものをふんだんに使ったお食事も◎

 

1泊2日2食付きプランは14,040円~。上野駅から上越新幹線で上毛高原駅まで行き(往復10,360円)、関越バスで猿ヶ京へ(往復1,760円)。猿ヶ京からみなかみ町営バスに乗り、法師で降ります(往復1,200円)。合計27,360円~。宿泊プランや時期により値段が変わります。

 

法師温泉長寿館

所在地|〒379-1401 群馬県利根郡みなかみ町永井650

電話番号|0278-66-0005

公式HP

 

秘湯への旅路だって、楽しみのひとつじゃい

電車とバスを乗り継いでいく、東京から秘湯への旅路。個人的にはもう少しお金を出して、レンタカーを借りて行ったほうが楽な場合が多いのではと思うのですが、ローカル線の旅もなかなか悪くないですよ。

 

とにかく奥まったところまで行くと、すこぶる温泉がいいんです。温泉がいいと、なんだか「うー、疲れとか悪い心が溶けていくー」って本当に思えるんですよね。

騒がしい温泉街も、近代的な施設もいらない気がしちゃう。静かな秘湯に身を委ねたいお休みの日にぜひ、行ってみてはいかが?

 

明賀屋本館

所在地|〒329-2921 栃木県那須塩原市塩原353

電話番号|0287-32-2831

公式HP

 

奈良田温泉 白根館

所在地|〒409-2701 山梨県南巨摩郡早川町奈良田344

電話番号|0556-48-2711

公式HP

 

法師温泉長寿館

所在地|〒379-1401 群馬県利根郡みなかみ町永井650

電話番号|0278-66-0005

公式HP