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4ヶ月の沈黙を破って地獄の底から蘇った第三回の教材は「ロッキー」です。

 

ロッキー(1976 / 主演:シルベスター・スタローン)

ならず者の底辺ボクサーが千載一遇のチャンスを掴んで頑張る話

 

またしても勤務時間内に見ました。それが仕事だから。いいだろう?

 

【見人(みんちゅ)の紹介】

筆者。瞳に「映画」という文字が刻まれている

ロッキー好き。瞳に何も刻まれていない雑魚

 

ロッキー (字幕版)

 

「8月以来の第三回です」

「8月下旬に第一子が産まれ、僭越ながら育児休暇を取りまくってました」

「おめでとうございます」

「子が産まれるとやっぱりすべての比重がそちらにいくので、映画を見る時間が全く無くなりますね。月20本ぐらいは当たり前のように見ていたんですが」

「やっぱりそうですよね」

「11月は10本しか見れなかったです」

「まあまあ見てる。ちなみにロッキーに関する知識は…?」

「『卵丸呑み』『階段登ってウオー』『エイドリア〜ン』ぐらいですね。ストーリーは全く知らないです」

「いつも通りの表面を薄くなでるような知識で助かります。早速見ていきましょう!ちなみに今回もロッキーに関する結末まで含めたネタバレがあります

 

■「ロッキー」あらすじ・起

ならず者の三流ボクサーであるロッキーはファイトマネーでは暮らして行けず、高利貸しの取立人として日銭を稼ぐ底辺人間だった。長年連れ添ったトレーナーのミッキーからも見放されて生きる目標を失いかけていたが、ただ一つの生き甲斐は向かいのペットショップに務める内気なエイドリアンの存在だった…

 

本日はハンバーガーを食べながら見ています

 

「僕、本当にロッキーが好きで、今日の服もロッキーのトレーニング時のスウェットを意識してるんですよ」

「へ〜。めちゃめちゃ寝間着みてえだな、と思ってました。そしていきなり試合から始まってる」

「ロッキーってサウスポーなんで、同業者からもけっこう嫌われてるんですよね」

「へ〜」

 

「ちなみに構え方はこうです。前に出てる腕を下げて構えてるでしょ? これはデトロイトスタイルとかヒットマンスタイルと呼ばれてまして、下からジャブを突き上げ……」

「邪魔」

 

「ちなみに中に着てるTシャツもロッキーなんですよ。『イタリアの種馬』っていうロッキー自身のニックネームも入ってて、かっこいいでしょ?」

「ギャラクシーさん」

 

「さっき食べたハンバーガーのマヨネーズが付いてます」

「ちなみに最初のこの試合が終わったあと、次にボクシングするのはクライマックスです。『ロッキー』というと上映時間のほぼすべてが試合だと思われがちですが、意外とボクシングやらないんですよ」

「ボクシングせい」

「しかしほんとに底辺の生活ですね。ファイトマネーも差っ引かれて雀の涙だし、借金の取立人も使いっぱしりにされてナメられてるし、スラム街も治安は悪いしたむろしてる若者からも罵声を浴びせられ、その才能を見抜いて長年連れ添ったトレーナーからも愛想を尽かされ…」

「じっくり『ダメ人間』としてのロッキーを描く序盤も分かりやすいんですよね。試合後に即タバコ吸っちゃダメでしょって」

「でも自宅で飼ってる金魚の名前がモビーディックってのがいいですね。ハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』のクジラの名前だ」

「小さい金魚に大きいクジラの名前を付けるのって、今の自分を重ね合わせてるのかもしれませんね。いつかビッグになってやるという意識が無いと名付けない」

「確かに。こういう底辺生活を見せて、最後にバッと花開かないと見てられないですよ」

 

「そしてこのペットショップのシーンもいいんですよね。ロッキーがずっとしゃべりまくってアプローチかけるという。ちなみにこの店、ユニバーサルスタジオジャパンに『エイドリアンズ ペットショップ』っていう名前で存在してるらしいです」

「ん!?これがエイドリアンなんですか!?!?」

「そうですよ」

「めちゃめちゃ無口で内気でファッションに一切興味のない感じすごい!デカブツが内気な女にアプローチするってなんかめちゃめちゃ古典的かつベタなシチュエーションで良いですね」

「今作はほぼロッキーとエイドリアンの色恋に半分以上占められていて、しかもこの二人の純愛がめちゃめちゃ良いんですよね…」

「だから試合のシーン無いんだ」

 

 

■「ロッキー」あらすじ・承

その頃、世界チャンピオンのアポロ・クリードは次回の対戦相手の欠場により「無名の選手と戦い、アメリカンドリームを体現させる」という企画を思いつく。プロモーター達の必死の捜索により白羽の矢が立ったのは他でもないロッキーだった。当のロッキーは、エイドリアンをデートに誘いスケートリンクで滑りながらめちゃくちゃしょうもない話を一方的にして徐々に距離を縮める…

 

「そしてロッキーの境遇をしっかり説明した後で、いよいよ話が動き出しますよ。世界チャンピオンのアポロ・クリードが、次の対戦相手としてロッキーを指名します」

「さっきの『イタリアの種馬』っていうニックネームに惹かれるという奇跡的な展開なんですね」

「その頃ロッキーは、エイドリアンをデートに誘うことに成功します」

「ボクシングせい」

急に自宅を訪れたロッキーを見て、無防備な部屋着だったエイドリアンは奥の部屋に隠れちゃいました、良いですね」

「で、ドア越しに誘うんですよ。コンコンってノックして『お~いエイドリアーン、おれだ。ロッキーだよ』ってね。ここの素朴な語り口、超良いんでぜひ羽佐間道夫さんの吹き替えで見て欲しい」

「なんか不器用に誘ってるけど全然反応無いですよ」

「ね。これはもうダメかなと思うんですけど」

 

「精一杯オシャレして出てくるんですよ!!!」

 

「いじらし〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

「良い…………『精一杯のおしゃれ』が全然おしゃれじゃなくて地味なのも良い……」

「ほんで貸切状態のスケートリンクで二人で滑るのも最高ですね」

「スタローンは本当にアイススケートが出来なさすぎるから、自分だけ靴で小走りしてエイドリアンに並走してたらしいです」

「あと、延々しょうもない話を間髪入れずにまくしたててますね。しかもボクシングの話ばっかり。エイドリアン全然興味ないでしょ」

「デートで楽しませる男の行動としては0点中の0点ですね」

 

「いやでも、ロッキーもエイドリアンも、お互い底辺の暮らしをしている背景があったからこそ精神的に支え合うという清らかな関係性の描き方が繊細で素晴らしいですね。現代の日本でも通用するような、今のオタク風に分かりやすく言うと『尊い』と言いますか…」

「エイドリアンもスケートど下手なんですよ。この無様なデートがすごくいい。恋愛に関する作品が創りたかったら、ロッキーを参考にするのも十分ありです」

「いやほんでロッキー自宅に招待するんですね」

「エイドリアンはけっこう嫌がりますよね。もちろん男の家になんか入ったことないですし」

「でもこのロッキーの押せ押せがすごいですね…」

「あれ…?」

「え…!?ロッキー?エイドリアン!?」

「おいおいおいおいおいおいおいおい」

 

「ボクシングは!?!?!??!?!?」

 

 

■「ロッキー」あらすじ・転

ロッキーにアポロ戦のオファーが舞い込んでくる。快諾したロッキーはマネージャーとしてエイドリアンの兄ポーリー、トレーナーとして一度は見限られたミッキー、そして精神的支柱のエイドリアンなど、孤独ではないことに気づき、今までの自堕落な生活をスッパリやめ、アポロ戦に向けて苦しい特訓を続ける

 

「さ〜て、いよいよアポロのオファーを受けて、ストーリーが本格的に動き出します」

「トレーナーとしてロッキーの才能を見出しながら自堕落生活で見放したミッキーとの和解も最高でした」

「あそこも良いんですよね。底辺なりにプライドがあって、それをぶつけるロッキーの姿」

「『ランボー』の一作目を彷彿とさせる魂の叫びがありましたね。スタローンは嘆きがよく似合う…。そしてその後の和解の握手。これが遠景なのが良い!」

「詳しいセリフは聞こえないんですけど、自宅からミッキーを追い出したロッキーがやっぱり外に飛び出して、ミッキーを呼び止めて何かを話して握手をして肩を叩いて…。本音をぶつけあった男たちだからこそ通じあえる世界に言葉は必要無し。人情味があって素晴らしい!」

「そして卵丸呑みのシーン。ここもロングテイクで割って飲むまでをシームレスに見せることでマジで飲んでることが強調されてました」

「当時アメリカで生卵は食中毒の危険性もあったから、このシーンを撮る際に別ギャラを要求したらしいです。それくらいマジなんだぞという気概を感じさせるシーンです」

 

「あ!名シーン!」

「フィラデルフィア美術館の階段を登りきってガッツポーズ……死ぬ前に一度は現地に行ってやってみたいことの一つです」

「確かにこれはやってみたくなるな〜」

「実際、今でも真似する人が後をたたないみたいです」

「ギャラクシーさん、老い先短いので冗談抜きで検討しといた方がいいかもですね」

「100歳まで生きるとしたらまだ折り返し地点には行ってないので、老後の楽しみにしておきます」

「ほんでここでようやくあの曲流れますけど、良い…。『燃えよドラゴン』のときもそうでしたけど、普遍的に愛される映画音楽って原作で流れると本当に熱くなりますね」

 

「この曲が流れると多少きついことも乗り越えてやるっていう暗示もかかりますしね」

「ちなみに、試合全然始まらないですけど上映時間あとどのくらいですか?」

「あと30分ぐらいですね」

「終わっちゃう!」

 

 

■「ロッキー」あらすじ・結

アポロ戦が近づいてきた。アポロはどの対戦相手も3ラウンドまでにKOでリングに沈めるほどの強さで、底辺を生きてきたロッキーはとても太刀打ちできない。勝てないまでも、せめて15ラウンド終了後まで立っていることが出来れば、ただのゴロツキなんかじゃないと証明できるかもしれない。ロッキーはそう決意しリングに上がる

 

「そろそろ試合が始まるんですけど、上映時間があと20分ぐらいしかないみたいです」

「ほぼロッキーの人情噺なんですよね、1作めは」

「これ…予想しますけど、鼻折れますよね?最初に『俺は鼻を折ったことがない』て豪語してるのがフリになってると思います。あとこれ…ロッキー負けます?

「さあ…それはどうでしょうね…」

「折れるし負けるやつだ」

 

「あと…エイドリアン、『転』以降めちゃめちゃ垢抜けてません!?色を知る年になったか…」

「女は色を知ると美しくなるんですよね…それにしても変わりすぎだけど」

「恋人としてTVに出る可能性もあるので、変な形のメガネなんかかけてられないですしね。そしてあと15分ぐらいしかないんですけど、入場シーン長くないですか?」

「アポロの入場シーン、ド派手でいいですよね。『アイ・ウォン・チュー!』って叫びながら指差すの最高です」

「でもボクシングでスターになるとこんなことも出来るんだぞっていうことを抜群に表現してますね。でもあと12分で終わる!!!15ラウンドもいけるか!?!?」

「1ラウンド、2ラウンド共にダウン応酬の熱い戦いですね……あ、有名なあの曲が流れ始めた!?

 

「ロッキーシリーズでこの曲が流れると、試合がダイジェストになる合図です」

え〜! もう14ラウンドまで行っちゃった!!せめて3ラウンド終了後をもっとフォーカスして『この俺が3ラウンドで倒せない相手がいるとは…!』みたいなマジの焦りは欲しかったんですけど、そこもダイジェストでいっちゃうんですね」

「でもこれ、試合のシーン自体をめちゃめちゃ短くすることで、殴られるシーンを見るのが苦手な人でも楽しめるような作りになってるのかもしれません」

「まあ確かに15ラウンドもしっかりやってたら間延びしちゃいますもんね」

 

「そして…試合が終わった…よく耐えた、ロッキー…」

「エイドリアンを呼ぶ魂の叫びも最高なんですよね…」

 

「エイドリアーーーーーン!!」

 

「ロッキーは、歴然の差がついている屈強なスター選手を相手に、15ラウンド耐え抜いたんですよ。ロッキーには勝ち負けなんて、本当にどうでもいいんです…」

「確かに…判定を告げるコミッショナーの声なんか全く聞こえない…でもそれでいいんですよね。勝ち負けじゃない。有言実行でやりきったことに価値がある…なんと素晴らしいことか…」

 

「エイドリアーーーーーン!!」

 

「で、ここのセリフ聞いておいてください」

 

ロッキー「??????

 

 

「アハハハハハ!!!今関係ね〜〜〜〜〜〜〜!!!!」

「まずそれ聞くか!?ってことを聞くのが最高なんですよね〜!」

「感動の渦に巻き込まれてたのに、めちゃめちゃ笑っちゃった…」(何と言ったかは、実際に見てお確かめください。マジで笑えます)

 

 

「それはさておき、終わりました。いや〜満足!!最高!

「いや〜喜んでもらえてよかったです。無名時代のスタローンがロッキーと同じくスターダムにのし上がった作品なのも納得の完成度ですよね」

「試合のシーンがなさすぎて大丈夫か?と思ったんですが、エイドリアンとの恋、ミッキーとの決別からの友情、ポーリーとの関係など、周りの人々とのつながりを深めていく中でそれがロッキーの力になっていってる心の成長が見れて良かったです。シリーズ作も見て行きたくなっちゃいました。そして息子世代の『クリード』シリーズを見るとさらに楽しみ方が増えそうです」

「この物語って、社会の底辺でクズとして生きてきたロッキーが、自分の人生と向き合って、この国で生きていくっていう話なんです。だから勝負の判定はどうでも良くて、最後まで立ってることが大事だったんですね。で、その力を与えてくれた女性の名前を叫び続けるっていうラストが感動なんすよ……!」

「なるほど。まあ〜とにかく半分以上時間を費やしてた人情劇に心打たれました。最高!」

 

 

THE END

 

 

 

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