ライターの神田(こうだ)です。

経団連が定めた就活ルールでは、採用面接・選考が解禁されるのは6月1日から。20年入社の学生にとっては、ここが正念場ですね。

※この指針は2021年春入社の学生から廃止されるようです

 

現在、私は社会人2年目……つまり2年前までは学生として就活に勤しんでいました。

 

エントリーシートを書いたり、面接を受けたり、マナー講座に参加したり……

当時、就活について疑問に思っていたことはたくさんあります。

というわけで今回は、ジモコロの運営会社であるアイデムにお邪魔し、就活の素朴な疑問をお伺いしました。

 

お話を聞いたのは、アイデムが運営する新卒向け求人サービスJOBRASS新卒の責任者・佐川好司さん。

・デジタル全盛の時代なのになぜ手書き履歴書なの?

・自由な服装って言われたけど、結局なにを着ていけばいいの?

など個人的に気になっていた疑問をぶつけてきました!

 

手書き履歴書ってなんなの?

「まずは履歴書の書き方からお聞きしたいんですが、なぜ手書き履歴書の文化ってなくならないんでしょうか。あれ以上に無駄な行為って人生において無いと思います」

企業側も、手書きだと読み取れなかったり管理しづらかったりするので、正直パソコンでいいってところも多いと思います。でも中には『筆圧を見たいから手書きが嬉しい』という会社もありましたね」

「は? 筆圧??」

「文字の迫力とか、手書きからにじみ出る熱量を感じ取るということなのかな。字の丁寧さから人柄を見るだとか」

「なるほど。それはなんとなく理解できるんですが……でも応募側の手間や採用側の読みづらさを考えると、手書きは無意味な労力なのでは?」

「まあ、無駄に感じる人が多いかも知れませんね。学生側からすると、一社でも『手書きが良い!』って企業があると、すべての企業に対して“念の為に”手書きにするしかないわけで」

企業側が『履歴書は手書きじゃなくてもいいよ』って公言してくれたら楽なのに。求人票にそういうこと書いちゃダメなんですか?」

「そもそも『履歴書を手で書かなければダメ』という決まりは作れないんです。なぜなら、ケガや障害によって手で書けない人もいらっしゃるからです」

「え、じゃあなおさら『手書きじゃなくてもいい』って公言しちゃえばいいのに。それによって履歴書一枚につき作成時間が10分は短縮できるし、全就活生単位で考えたら、何万時間もの無駄が無くなり、経済が回り、貧富の差や戦争もなくなるのでは?」

「戦争がなくなるかはわかりませんが……ここがややこしい所でして。『手書きじゃなきゃダメ』という決まりを作ることはできないのに、わざわざ『ウチは手書きじゃなくてもいい』と公言するのは変、というのがあるのかも」

「ややこしい~! これをご覧の採用担当のかた、ぜひ学生の気持ちと時代の空気を汲み取って、求人票に『手書きじゃなくてもいいよ』って書いてあげてください」

 

「エントリーシートや履歴書って、みんなめっちゃ時間かけて書くじゃないですか。それって企業側は全部読んでるんですか?」

「企業によると思います。求めている人物像ではないとわかった時点でハネる会社もあれば、社員を集めて全部目を通す会社もあります。私が聞いたのは1カ月で7000枚読むとか」

「そんなに! 採用する側も大変ですね……。企業は一体どういうところを重点的に見るんでしょうか」

志望動機ですね。なぜ志望したのかがしっかり書かれていないと、いくら経歴がよくてもアウトです。例えば会社のことをどれだけ調べたかのエピソードがあると、『志望度が高い』と判断されたり。大事な部分だと思います」

「なるほど。でも志望理由なんて『給料がいい』とか『有名な会社だから何となく』とか、そんなんじゃないですか? それって正直に書いてもいいんですか?」

「『給料がいい』といった志望動機を、魅力的に語れるなら、無くはないです。無くはないですが、そこは『建前もちゃんと作り込めます』というアピールの場にしたほうが、よりプラスになるかもしれません」

 

 

自由な服装ってなんなの!?

「面接や説明会で『自由な服装でお越しください』と言われることがあります。企業側としてはフランクで今どきの会社ですよってアピールしたいんだと思いますが、逆に困るんですよ。結局何を着ていけばいいのか

「基本的には清潔感のある服装であればOKです」

「清潔感があれば、半袖半パンでもいいんですか?

半袖半パンは『虫取りのついでに来たのかな?』と思われて不利かもしれませんね。服装で他と差異を出そうとするのはリスクなので、『自由な服装で』と言われても、スーツがいいかなと思います。大事なのは中身なので」

「『せっかく自由な服装って言ってやったのに、スーツなんか着てきやがってこのチキン野郎』とか思われません?」

「う~ん、デザイン会社やアパレル会社なんかだと、応募した人のセンスを見たい場合もあるので、一概にスーツが良いとは言えませんけどね。あくまで最大公約数的にはスーツなら安牌ってことです」

「スーツを持ってない人はどうしたら?」

「スーツが必要なシーンって大人になると増えるので、一着くらいは買ったほうがいいと思いますが……どうしてもスーツ以外でってことなら、せめて襟のついてる服とか」

 

「面接時、服装でやってしまいがちなミスってありますか?」

「意外と白いソックスを履いてくる人がいますが、足元だけが変に目立っちゃうのでやめたほうがいいです」

「え、そうなんですね! 白ソックスなんて、むしろフレッシュで好印象なのかと思ってました」

「スーツは紺か黒、靴下は暗い色でちゃんと足首まであるものが好印象です。女性はパンツスーツという選択肢もありますね。スカートとパンツ、今は半々くらいではないでしょうか。採用側としてはどちらでも構わないと思います」

「髪型はどうでしょう?」

「男性も女性もそれぞれ爽やかさがあれば大丈夫ですね。前髪は目にかからないようにしたほうがいいです」

「じゃあ中国の弁髪(頭髪を剃り、後頭部だけを長く伸ばして編む髪型)とかでもOK?」

「中国系の企業なら、あるいは……」
「茶髪なんかはどうでしょう? 面接官側から見て、『こいつ就活のためだけに黒染めしたな』っていうのは、バレてます?」

「それは完全にわかりますね。ただ、私は『わざわざ就活のために変えてくれたんだ』とポジティブに捉えます。そんなにウチの会社に入りたかったんだなと」

「総合すると、服装や見た目で独自性を出そうとするのではなく、違和感を与えないよう心がけるということですね」

 

 

自己PRってなんなの?

「面接時に『自己PRをしてください』と言われることがありますが、あれって何をしゃべれば正解なんでしょう?」

「じゃあ、今、神田さん自己PRをやってみてください」

「えっ! えーと、私は真面目で落ち着きがあって……あと、その~真面目であり~……」

「自己PRは、自分のことを分析できているか、また、自分をどのように見せたいと思っているのか、の指標になります。好感度が高いのは、自分の人間性が伝わるエピソードとかですかね」

「サークル活動に打ち込んで、リーダーシップを発揮しました……みたいなことですか?」

「ベテランの人事はそんな外面的なストーリーは聞き飽きてるので、お腹いっぱいかもしれません。そのプロセスで何を学んで、今の自分にどう生きてるのか、という内面まで言えれば、人柄もわかるのでバッチリです」

「むずかしい……」

「大抵の学生は事前にエピソードを用意して、何度も練習するようです。ただ、そういう人は、変化球の質問をすると途端に喋れなくなったりします。用意していたものをなぞるだけのスピーカーにならず、ちゃんと咀嚼して落とし込んだほうがいいですね」

「あと面接で『あなたを動物に例えると?』とかの変な質問がありますが、あれは何なんですか? 企業に忠実な『犬』ですと答えたほうが高評価なのでしょうか」

「その類の質問は、さっきお話しした変化球というやつですね。用意してきたメッキを剥がす作業というか、準備不可能な問いに対して、きちんと説明できる瞬発力を試しています」

「面接官って性格悪くないとできないですね」

「ちなみに神田さんは自分を動物に例えるとなんですか?」

「ゾウです」

「それはなぜ?」

「ゾウは仲間を殺されると報復するなど、非常に執念深い動物だからです。また、あの鼻はスムーズに動いているので柔らかいものだと思いがちですが、実は筋肉の塊であり、攻撃力も非常に高いのです。さらに頭も賢く、飼育員が自分より下だとランク付けると、踏んだりします。そして……」

「もう大丈夫です。きちんと説明したほうが良いとは言いましたが、そこまでゾウについて話されても、怖いです

 

 

集団面接が苦手

「私は集団面接が苦手です。なぜあのような悪魔のシステムが存在するのでしょうか」

「そこまで嫌う理由は?」

「面接官が質問すると、みんなエサをねだる鯉みたいに手を挙げてて気持ち悪いんです」

「社会人2年目とのことですが、そんな感性でちゃんと働けてます?」

「問題ありません」

「集団面接の理由としては、単純に企業が数をさばきたいというのもあるんですが……グループのなかでどう振る舞うかを見たいんですよね」

「でも端から順に質問に答えていって、次が自分の番だ……!と思うともう緊張しちゃって。まともに話せなくなります」

「緊張は誰でもするので、気にしなくて大丈夫です。むしろ、まったく緊張せずにスラスラ喋る人は、こちらもちょっと警戒しちゃいますね」

「ちょっとくらい緊張してたほうが可愛げがある……? 自分が言おうとしてたことと全く同じ内容のことを、先に言われたらどうしたらいいんですか?」

「『私も同じ考えなのですが……』から始めて、ちょっとだけ自分のオリジナリティを付け加えたら良いと思います。正直、5人で集団面接したとして、すべての質問に5種類の答えが出るわけはないので、カブっても良いんです」

「おぉ、ちょっと心が楽になりました。就活の本とかを見ると、会話を回す司会者的な役目の人は好印象ってあるじゃないですか。これは本当ですか?」

「確かに評価されがちですが、最近ではよくしゃべるという理由で評価するのはやめようという会社も増えてきています。人には色んな特性がありますから」

「よかった。勝手に私の意見をまとめてリーダー面してきた知らん学生を、いまだに恨んでいるので……。いい顔しようとしやがって……何百年経っても恨んでやる」

「ほんとにその感性でちゃんと働けてます?」

「問題ありません。面接での評価されやすいポイントとして、ボランティアサークルに入っていた、というのがあると思います。実際、私の周りでは、就活に有利になるからという理由でボランティアサークルに入る人がすごく多かったんです」

この時期になると、ボランティアやってた人と部活のリーダーがめちゃくちゃ増えるんですよ。面接官の間では“あるある”だと思います。今となってはありふれているので、特別評価されるわけではないですね」

「そこで何を学んだかが重要ですもんね。大学1年生のとき俺のことをバカにしたボランティアサークルの人間見てるか?」

「こわっ」

 

今日は色々と勉強になりました。最後に、『いよいよこれから就活か……』と憂鬱になっている学生たちに、何かアドバイスをいただけますか?」

人生で初めて、人間的に評価されるのが就活です。誰だって足がすくむものですが、入社したいという気持ちを胸に、全力を尽くして頑張ってほしいです。どんな言葉よりも、その気持ちは、絶対に通じます

「面接官は、いわばこちらの気持ちを汲むプロ。嘘は見抜かれるし、本気で入社したいって思ってるなら、ド緊張してキョドってても汲み取ってくれると」

「もちろん! そのために顔を突き合わせて面接するわけですから。策を弄するより気持ちです。これは精神論とかじゃなくて、本当に」

「なるほど。学生のみなさん、これからの就活、頑張ってくださいね! そして、集団面接の時は、エサをねだる鯉みたいに手を挙げましょう!」

「就活生より、あなたの社会生活のほうが心配ですよ……」

 

 

まとめ

というわけで今回は、アイデムが運営する新卒向け求人サービスJOBRASS新卒の責任者・佐川さんに、就活についてお聞きしました。

 

▼企業と学生をつなぐ JOBRASS新卒

 

自分が就職活動していた頃を思い出して若干息苦しくなりましたが……策を弄するより気持ちが大事、この言葉で少し心が軽くなりました。

 

最後に、「今日のインタビューから受けた私の印象があると思いますが、もし就活生だとしたら、雇ってくれますか?

と質問したところ、

 

「申し訳ありません。今後のご健闘をお祈り申し上げます」

 

とのことでした。

以上です!

 

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