こんにちは、コエヌマカズユキです。

僕は読書好きが集まるバーを開いてしまうほど本が好きです。中でも新潮文庫は日本・海外ともに定番がそろっていて、気づけば本棚の多くを新潮文庫が占めている状況……

 

というわけで今回は―

 

東京・神楽坂にある新潮社さんにやって来ました!

新潮社といえば、125年以上の歴史を持つ超・老舗出版社。どのような成り立ちなのか、どんな苦労があったのか、そしてオススメの文学作品も教えてもらいましたよ!

 

今回のあらすじ

・新潮社の歴史

・新潮文庫累計部数トップ10

・新潮社が真におすすめする厳選40冊

 

新潮社の歴史

話を聞いたのは広報担当の馬宮守人さん。

 

「今日はよろしくお願いします! 新潮社といえば老舗の出版社というイメージですが、どういった経緯で創業したのですか?」

「創業者・佐藤義亮が、明治29年(1896年)に『新声』という雑誌を創刊しまして、これが新潮社の歴史の始まりですね」

ひゃっ、125年前!!??

「『新声』は、現在も刊行している文芸誌『新潮』の前身にあたります。内容は文芸評論や社会評論などが中心でした。創刊号は800部を刷って、即売り切れたそうなので、反響はよかったと言えるでしょうね」

「125年前に文芸評論や社会評論などを求める読者が、そんなに居たんですね!」

「むしろ当時は、人々が出版物を通じて活発に声をあげられるようになってきた時期でして。作品やそれに対する批評・論評もたくさん出て盛り上がっていました。いろいろな雑誌が創刊された時期ですね」

 

秋田県から大志を抱いて上京し、印刷所で働きながら『新声』を創刊した故・佐藤義亮。1936(昭和11)年、彫刻家・朝倉文夫作の胸像。新潮社のロビーで今も文学界を見つめ続けている。

 

「では『新声』は、そのまま順風満帆に『新潮』に繋がると」

「いえいえ、『新声』の出版権を譲渡することになってしまったり、再起のための軍資金が盗難に遭ってしまったり、かなり紆余曲折あったようです。残ったわずかな資金をもとに、1904年に文芸誌『新潮』を発行しました」

「1904年……そのまま117年も刊行され続けているってすごいですね」

「新潮社は小説に関しても、日本だけでなく、 ツルゲーネフ、ゲーテ、バルザック、ジード、ニーチェなど世界の文学もいち早く紹介してきました。1914年にはさらに世界の文学を紹介するため、新潮文庫を創刊します」

「おお、いよいよ!」

 

2014年に刊行された第1期新潮文庫の復刻版。

 

「これが初期の新潮文庫ですか……! 『ロミオとジュリエット』や『人形の家』といった名作が並んでますね。本のデザインというか、作りが今とはかなり違うようです」

「当時はハードカバーでした。天地(本の上下)や小口(背表紙の反対側)にも色がついていて、表紙の文字も箔押しという方法で加工しています。戦争などの理由で途中3回の中断を経て、戦後に第4期として今の新潮文庫が始まりました

「僕らの知ってる新潮文庫は第4期にあたるのか……ところで、ひとつ気になっていたことを聞いてもいいでしょうか?」

「なんでしょう?」

 

「新潮文庫の本を開くと、最初のページに数字が書かれてますよね? 作品ごとにそれぞれ固有の数字が割り振られてるようです。これってたぶん出版順に数字が振られてると思うんですが、『1』……つまり最古の本って何ですか?」

「あの数字は入稿番号、つまり‟印刷所に作品の原稿を入れた順番” を示しています。数が若いほど昔に入稿された本ですね。現在は『11500』を超えてますが、『1』は……」

「なんだろう? 一番最初だから『これぞ新潮文庫!』っていう作品ですよね? シェイクスピア? 夏目漱石?」

「お教えしましょう。この作品です!」

 

 

雪国(新潮文庫)

 

ノーベル賞作家ーーー!! なるほど、これ以上ないほど納得しました。売り上げ的にはどの作品が一番売れてるんですか?」

「何だと思います?」

「う~~~~~ん……これは難しい! ヘミングウェイ……いや、ファンが多そうな太宰治の『人間失格』じゃないですか!?」

「文庫だけの累計だと、こんな順位になってます」

 

1位

 

2位

 

3位

 

4位

 

5位

 

6位

 

7位

 

8位

 

9位

 

10位

 

「『こころ』か~~~!! これも納得だ……」

『こころ』は累計発行部数750万部以上でして、不動の一位ですね。学校の読書感想文のために読んだかたも多いのでは?」

「確かに! でも僕が予想した『人間失格』も2位ですから、良いセンいってましたね。太宰は他にも8位に『斜陽』がランクインしてますよ」

「新潮社には名物編集者と呼ばれた故・齋藤十一という方がいまして。実は太宰治は齋藤が見出した作家なんですよ」

「えー! とてつもなく見る目があった編集者なんですね」

「大ヒットとなった『柳生武芸帳』の五味康祐さんを世に送り出したのも齋藤です。他には『週刊新潮』や『フォーカス』を創刊したり……」

「え、本物の天才じゃないですか」

「ただかなりクセのある人ではありました……前出の五味康祐さんは 何度も寄稿するたび、『貴稿拝見、没』とだけ書かれた齋藤のメッセージ付きで、原稿が送り返されてきたそうです」

「うわっ厳しい……」

「これね、“拝見”という言葉の意味を考えるとさらに厳しい言葉なんですよ。“拝読(読んだ)”ではなく、“拝見(見た)”ですから」

「心折れるわ!」

 

「馬宮さんが個人的に好きな小説ってありますか?」

「この仕事をやっているので数え切れないほどあるんですが、あえて一作品だけ挙げるなら……宮本輝さんの『流転の海』シリーズです。宮本さんのお父様をモデルに、1982年から2018年まで37年かけて執筆した、全9巻の大作です。これは本当に素晴らしい作品なので、ぜひ読んでいただきたいですね」

 

 

「読んでみよっと。最近は読書離れと言われてますが、実際のところ、文学作品を読む若者はやはり少ないのでしょうか」

「いえ、一定の需要は常にありますね。文学で描かれる人の心や、人生の物語は、いつの時代に読んでも決して色褪せることがない、不変の価値を持つ物語です。だから、読書離れと言われても、悲観的には考えていません」

「確かに! 社会や技術が変わっても、結局ヒトが考えるようなことや人を取り巻くドラマって、大昔からずっと変わってないような気がします」

「一方で、古い作品であっても『今の時代だからできる解釈』があって、新鮮に感じたり……」

「解釈の自由度が高いというのは、文字だけで構成される『文学』の良い部分ですね」

「こんな時代だからこそ、過去や現代、様々な作家が描いた考え方や、人生、価値観といったものに、ページをめくるだけで触れることができる『文学』って、必要なのではないでしょうか」

「おっしゃる通りです! ただ、本を読み慣れていないと『自分が何を読めばいいのかわからない』というのが結構ありますよね。最低限これだけは読んでいたほうがいい作品を知りたい

「新潮文庫だけでも1万点以上の本が出ているわけですから、どれを読むかというのは……特に初心者の方にとっては非常に重要な問題です」

「というわけで後半は、そんな新潮社さんが『絶対に、これだけは読んだほうがいい!』とおすすめする定番中の定番、ど真ん中ストレートな文学作品をご紹介頂きましょう!」

「本当なら1000冊くらい挙げたかったんですが……社内で議論を戦わせ、血を吐く思いで厳選した40作品です。ぜひ、ぜひ! 読んでみてください!」

 

これだけは押さえておきたい作品|日本

夏目漱石『こころ』

こころ(新潮文庫)

鎌倉の海岸で出会い、「私」と「先生」の交流が始まる。奥様と穏やかに暮らす「先生」だが、誰にも言えない過去が。あるとき「先生」から遺書が届き、親友Kとの秘密が書かれていた。

 

川端康成『雪国』

雪国(新潮文庫)

東京で妻子と暮らす島村は、雪国の温泉で芸者の駒子と出会う。駒子と関係を持ち、激しい愛情を受けながらも、島村の心は他の女性に揺れていくのだった。

 

太宰治『人間失格』

人間失格(新潮文庫)

青森の名家に生まれた大庭葉蔵。他人や世間を恐れ、幼いころから道化を演じてきた葉蔵は、人妻と自殺未遂をする。その後も次々と女性と関係を持ち、酒や薬物におぼれていく。

 

三島由紀夫『仮面の告白』

仮面の告白 (新潮文庫)

人と違う性的傾向に悩んでいる「私」。友人の妹・園子と恋に落ちるも、接吻をした瞬間にあることを悟り、彼女から逃げようと考えるのだった。

 

安部公房『砂の女』

砂の女 (新潮文庫)

砂丘へ昆虫採集にやって来た男が、砂穴の底にある、女の住む家に閉じ込められる。何度も逃げ出そうとする男だが、やがてそこでの生活に心地よさを覚えていく。

 

遠藤周作『海と毒薬』

海と毒薬(新潮文庫)

小心者の町医者・勝呂(すぐろ)は、大学病院時代に忌まわしい過去があった。第二次世界大戦中、教授たちに反対できず、米軍捕虜への人体実験に参加していた。

 

大江健三郎『個人的な体験』

個人的な体験(新潮文庫)

アフリカへの冒険旅行を夢見る青年・鳥(バード)。生まれてきた子どもに障害があり、自由を奪われることに絶望し、酒や女友達との性交渉におぼれていく。

 

開高健『輝ける闇』

輝ける闇 (新潮文庫)

ベトナム戦争の取材で現地へ向かった「私」。アメリカ人やベトナム人、日本人記者、情婦らと交流しつつ過ごすが、やがて大規模な銃撃戦に巻き込まれて行く。

 

宮本輝『流転の海』

流転の海―第一部―(新潮文庫)

50歳で初の子どもを授かった松坂熊吾は、この子が20歳になるまでは必ず生き、自分の人生経験の全てを注ぐことを誓う。作者の父をモデルに、その妻と子どもの20年を描く。

 

村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上下)合本版(新潮文庫)

高い壁に囲まれた街「世界の終わり」で、そこに生息する一角獣の頭骨から古い夢を読む「僕」と、老化学者にある装置を仕掛けられた「私」が、その秘密を探っていく「ハードボイルド・ワンダーランド」の2つの物語。

 

これだけは押さえておきたい作品|海外

ゲーテ『若きウェルテルの悩み』

若きウェルテルの悩み(新潮文庫)

青年ウェルテルが思いを寄せるシャルロッテには、婚約者がいた。叶わぬ恋に苦しみ、絶望したウェルテルは命を絶ってしまう。

 

テネシー・ウィリアムズ『欲望という名の電車』

欲望という名の電車 (新潮文庫)

若い未亡人ブランチは故郷を離れ、ニューオーリンズで暮らす妹のもとを訪れる。そこで知り合った男性と新たな人生を始めようとするが、妹の夫スタンリーから、彼女が故郷を捨てた理由を暴露されてしまう。

 

フランツ・カフカ『変身』

変身(新潮文庫)

ある朝、主人公ザムザが目覚めると、巨大な虫に変身していた。世話をしてくれる家族だが、気味悪がられ、ある出来事がきっかけで見捨てられることになる。

 

アルベール・カミュ『異邦人』

異邦人 (新潮文庫)

青年ムルソーは、母の死の翌日に海水浴に行き、女性と遊び、映画館で笑い転げた。ある日、トラブルに巻き込まれ、人を殺してしまったムルソーは、動機を「太陽がまぶしかったから」と述べる。

 

トルーマン・カポーティ『ティファニーで朝食を』

ティファニーで朝食を(新潮文庫)

新人女優のホリーは、金持ちの男性たちにお金やプレゼントをもらい、高級レストランやクラブに出入りする日々。事件に巻き込まれ、逮捕されてしまった彼女をある人物が助ける。

 

シェイクスピア『ハムレット』

ハムレット(新潮文庫)

デンマークの王子ハムレットは、急死した父である王の亡霊から、叔父の計略で殺されたと告げられる。復讐を誓うハムレットだが、彼を殺そうと叔父も策略していた。

 

ドストエフスキー『罪と罰』

罪と罰(上)(新潮文庫)

貧しい大学生ラスコーリニコフは、強欲な金貸しの老婆を殺害するも、居合わせた妹まで殺してしまい、罪の意識にさいなまれる。また自己犠牲に生きる娼婦ソーニャと出会い、自首を決意する。

 

ニーチェ『ツァラトゥストラかく語りき』

ツァラトストラかく語りき(上) (新潮文庫)

故郷を捨てて山に入り、孤独に10年間を過ごしたツァラトストラは、「ついに神は死んだ」と叫んで人里に降りる。キリスト教的な道徳を否定し、「超人」「永劫回帰」といった作者の思想が語られる。

 

チャールズ・ブコウスキー『町でいちばんの美女』

町でいちばんの美女 (新潮文庫)

アル中の詩人「私」は、酒場で娼婦のキャスと出会う。恋に落ちる二人だが、繊細なキャスはときに自傷行為をし、「私」を戸惑わせる。そして突然、別れが訪れる。

 

ユゴー『レ・ミゼラブル』

レ・ミゼラブル(一)(新潮文庫)

パンを盗んだ罪で19年服役していたヴァルジャンは、ある司教との出会いで改心し、新たな人生を進んでいく。彼をはじめ、さまざまな人の物語が、18世紀前半のフランスを舞台に交錯する。

 

文学初心者でも読みやすい作品|日本

芥川龍之介『蜘蛛の糸・杜子春』

蜘蛛の糸・杜子春(新潮文庫)

地獄に落ちた泥棒のカンダダは、生前、小さな蜘蛛を助けたことがある。釈迦は彼を救おうと、天から蜘蛛の糸を下ろす(『蜘蛛の糸』)。金持ちの若者が、平凡な幸せを見つけるまでを描いた『杜子春』。

 

井伏鱒二『山椒魚』

山椒魚(新潮文庫)

谷川の岩屋で暮らしていた山椒魚は、成長して体が大きくなり、外に出られなくなってしまった。一人すすり泣く山椒魚は、岩屋に飛び込んできた蛙を閉じ込めてしまう。

 

井上ひさし『ブンとフン』

ブンとフン(新潮文庫)

小説家のフン先生が書いた小説『ブン』から、主人公の大泥棒ブンが飛び出した。世界各地でおかしな事件を起こすブンを捕まえるため、警察長官は悪魔と契約する。

 

江國香織『きらきらひかる』

きらきらひかる (新潮文庫)

アル中の笑子と同性愛者の睦月は、お互いを許し合ったうえで結婚し、奇妙だが幸せな夫婦関係を送る。睦月の恋人・紺とも友情を深めていくが、笑子の情緒は不安定になり、そこへかつての恋人が現れる。

 

梶井基次郎『檸檬』

檸檬(新潮文庫)

正体不明の不安にさいなまれた男は、京都の街を当てもなくさまよう。途中、果物屋でレモンを買い、丸善の画集の上に置き、爆発することを想像しながら店を去る。

 

角田光代『さがしもの』

さがしもの(新潮文庫)

おばあちゃんが孫の少女に、「その本を見つけてくれなけりゃ、死ぬに死ねないよ」と、ある本を探してほしいとお願いする。少女はその一冊を探し求めて奔走する。

 

川上未映子『あこがれ』

あこがれ(新潮文庫)

おかっぱ頭の少女ヘガティーと、やせっぽちで絵が得意な麦君は仲良しコンビ。サンドウィッチ売りの女性や、まだ見ぬ家族へのあこがれを支え合い、少しだけ大人へ近づいていく。

 

吉本ばなな『キッチン』

キッチン

唯一の家族である祖母を亡くした大学生みかげは、祖母の行きつけだった花屋の店員、田辺雄一が母と暮らす家に居候することに。親子と過ごすうちに、みかげは孤独から解放されていく。

 

太宰治『走れメロス』

走れメロス(新潮文庫)

青年メロスは、人々を苦しめている暴君の王に歯向かい、処刑されることになるが、妹の結婚式のために3日間の猶予をもらった。身代わりに捉えられた親友を救うため、メロスは走り続けた。

 

三島由紀夫『潮騒』

潮騒 (新潮文庫)

小島で漁師をする18歳の新治は、少女・初江と恋に落ちる。あるとき、新治らの乗る船が台風に襲われ、彼は命を懸けて船を守ろうと、荒波に飛び込んだ。

 

文学初心者でも読みやすい作品|海外

ヴェルヌ『十五少年漂流記』

十五少年漂流記 (新潮文庫)

寄宿学校の少年15人だけを乗せた船が海に出て、ある海岸にたどり着く。見知らぬ土地で、知恵や勇気を振り絞って生き抜く彼らのもとへ、凶悪な水夫たちがやって来る。

 

ウェブスター『あしながおじさん』

あしながおじさん(新潮文庫)

身寄りのない少女ジュディーに、匿名の紳士「あしながおじさん」が、大学進学のための奨学金を出してくれることに。条件は、毎月手紙を出すこと。ジュディーは大学を卒業し、やがてあしながおじさんと対面する。

 

O・ヘンリー『賢者の贈りもの』

賢者の贈りもの―O・ヘンリー傑作選I―(新潮文庫)

クリスマス前日、貧しい夫婦が相手にプレゼントを買うために、お金を工面しようとする。それぞれ大事なものを売り、最高のプレゼントを買った夫婦だったが、意外な事実が明らかになる。

 

スティーヴン・キング『スタンド・バイ・ミー』

スタンド・バイ・ミー―恐怖の四季 秋冬編 (新潮文庫)

家庭に事情を抱える少年4人が、行方不明の子どもの死体が森の奥にあると聞き、探しに行く。死体を見つけた少年たちだったが、そこへ不良グループが現れる。

 

ケストナー『飛ぶ教室』

飛ぶ教室 (新潮文庫)

寄宿学校の少年たちは、クリスマスパーティで披露する芝居「飛ぶ教室」の稽古に明け暮れていた。貧困、臆病、両親に捨てられた過去など、それぞれの事情を抱えた少年たちが成長していく。

 

スティーヴンソン『宝島』

宝島(新潮文庫)

海辺で暮らす少年ジム・ホーキンズは、ひょんなことから宝島の地図を手に入れる。財宝を探しに仲間たちと向かうが、島で待ち受けていたのは海賊たちだった。

 

ツルゲーネフ『はつ恋』

はつ恋(新潮文庫)

16歳の少年ウラジミールは、隣に越してきた美女ジナイーダに恋をするが、もてあそばれてばかり。あるとき、ジナイーダに恋人がいることを知り、待ち伏せをすると、現れたのは意外な人だった。

 

ヘッセ『車輪の下』

車輪の下(新潮文庫)

少年ハンスは周囲の期待を受け、神学校に優秀な成績で合格する。だが厳しい規則や、勉強ばかりの日々に疑問を持ち退学。機械工として再出発するも、劣等感にさいなまれ、生活はすさんでいく。

 

ヘミングウェイ『老人と海』

老人と海(新潮文庫)

84日間も不漁だった老漁師は、小舟で船に出て、巨大なカジキを死闘の末に吊り上げる。だが陸へ戻る途中にサメが現れ、カジキに襲い掛かった。

 

モンゴメリ『赤毛のアン』

赤毛のアン―赤毛のアン・シリーズ1―(新潮文庫)

老夫婦のもとに孤児として引き取られた、赤毛でそばかすだらけの少女アン。おしゃべりで元気いっぱいなアンが、さまざまな事件を起こしながら成長していく物語。

 


 

というわけで今回は新潮社にお邪魔して、おすすめの文学作品を挙げてもらいました。

家にこもりがちになる冬の間、ここに挙げた作品を1冊だけでも読んでみてくださいね!

 

では最後に、古典的名作に限定せずおすすめする新潮社作品を、おまけとして紹介しつつ、この記事の締めに変えさせて頂きます。新潮社は色々な本を出してるなぁ……

 

おまけ|編集者イチオシの作家・作品

吉川トリコ『おんなのじかん』

おんなのじかん

親しい友人に語りかけるような文章が印象的な本作。ごく私的な家族の記憶や、熱い推しへの想い、不妊治療の体験などが真摯にかつユーモラスに綴られています。特に、第1回PEPジャーナリズム大賞オピニオン部門を受賞した「流産あるあるすごく言いたい」は妊娠出産をめぐるタブーを疑い、旧弊な価値観に風穴を開けた名エッセイ。

 

三川みり『龍ノ国幻想1 神欺く皇子』

龍ノ国幻想1 神欺く皇子(新潮文庫nex)

角川ビーンズ小説大賞審査員特別賞受賞のデビュー作『シュガーアップル・フェアリーテイル 銀砂糖師と黒の妖精』の時からすでに、キャラクター造形と異世界の設定の作りこみに抜群の才能を発揮していた三川さんですが、本作では、ついに大きなファンタジーワールドの造形に着手。異世界ファンタジーでありながら、「人の生き方」を問う作品です。まさに、本作で才能が爆発したと絶賛されています。

 

大塚已愛(おおつか・いちか)『鬼憑き十兵衛』

鬼憑き十兵衛(新潮文庫)

2018年日本ファンタジーノベル大賞受賞作。若き剣豪が暗殺された父の仇を討つべく熾烈な闘いを繰り広げます。手助けするのは、巨躯をもつ鬼と青い瞳の少女。時代伝奇小説かつ、抜群のキャラクター文芸であり、切ないボーイ・ミーツ・ガール小説でもあります。著者は本賞と同時期に角川文庫キャラクター小説大賞も受賞した大注目の新鋭です。

 

結城真一郎『名もなき星の哀歌』

名もなき星の哀歌(新潮文庫)

2018年、第5回新潮ミステリー大賞受賞作です。21年9月に文庫化されました。デビューされて3年ですが、すでに日本推理作家協会賞短編部門も受賞されています。魅力的なストーリー展開、大胆な発想と緻密な伏線、謎が解かれパズルのピースがぴったりはまるような快感と、ラストにロマンティックな感動をも同時に味わえる作風に、読者が増えています。

 

浅原ナオト『今夜、もし僕が死ななければ』

今夜、もし僕が死ななければ(新潮文庫nex)

『彼女が好きなものはホモであって僕ではない』で2018年にデビュー、同作がNHKでドラマ化されたのち、2021年に「彼女が好きなものは」のタイトルで映画にもなり話題を呼んだ浅原さん。本作は、人の死が見える少年の成長を辿る短編連作ですが、人と人との繋がりや生きる意味を問う切実な展開に、涙なしに読めない!と口コミが広まり、増刷を重ねています。

 

 


 

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