こんにちは、コエヌマカズユキです。

外出自粛期間中、「この機会に小説でも書いて大人気になってアニメ化されてみようかな」と思ったんですが、何っっっにも思い浮かばず、結局ダラダラとお酒を飲むだけの日々を過ごしました。

 

調べてみたところ、世の中には「小説投稿サイト」がたくさんあり、気軽に作品を投稿したり、他の人が書いた作品を読んだり、感想を書き込んだりできるみたいなんです。

とはいえ―

 

「小説なんて書いたことない……というか作文も苦手」

「面白い物語のアイディアなんて思い浮かばない」

「投稿して悪い評価がついたらへこむ」

 

など、不安もありますよね。そこで今回は、小説投稿サイト「エブリスタ」の中の人、坂井風太さんと松田昌子さんに、創作のヒントを聞いてきました!

 

 

「エブリスタ」とは?

現在まで200万作品以上が投稿され、1000点以上が書籍化した小説投稿サイト。

『王様ゲーム』

『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』

『Perfect Crime』

『5分シリーズ』

など、ベストセラー作品も多数生まれている。

※エブリスタ公式HP

 

どんな小説を書けばいいの?

「本日はZOOM取材を受けて頂いてありがとうございます! 自宅にいる時間を利用して、小説を書いて投稿したいと考えてまして」

「エブリスタは投稿のハードルがかなり低いサイトだと思うので、ぜひ書いてみてください」

「おもしろい作品が埋もれてしまわないような取り組みも、たくさんおこなってますから」

「ただ、まだ何を書いたらいいのかわからない状態なんです。今ってどのジャンルを書くのがオススメなんでしょうか?」

「それは、自分が好きなジャンルで書くのが一番ですね」

「え? 読者に読まれたいと思ったら、人気のジャンルで書くのがいいかと思ったのですが……」

「私たちは、作品の魅力は作家さんの中にあると考えています。自分独自の面白さを意識するのが大事だと思います。人気のジャンル・トレンドを追うことも大事ですけど、それだけを意識すると、書いていて面白くなくなってきますし、エンタメ業界全体としても、縮小再生産になってしまいます」

「なるほど」

「『優しさ』や『ひねくれ』といった性格や、自分ならではの人生経験といった個性こそが、傑作を生み出すための最高の素材です」

 

双葉社ジュニア文庫 王様ゲーム

『王様ゲーム』金沢伸明

高校1年生のクラス32名全員の携帯電話に、突然”王様”から命令のメールが。その内容は次第にエスカレートし、命を懸けた王様ゲームに発展していくのだった……。

 

「それが結果として読者の心をつかむと」

マーケティングを意識して書くというのは全然ありなんですけど、小説投稿サイトって、紙の世界よりもずっと変化が早いんです。書き終わる頃にはジャンル自体が人気じゃなくなっているかもしれません」

「なるほど。ネットの流行は移り変わりが早いというのはすごくわかります」

「あと流行りのジャンルはライバルが多く、競争が激しくなるという面もありますね。ジャンルが何であれ、自分の魅力を最大限発揮させることを一番に考えたほうがいいと思います」

「そうなんですね。ジャンルとして“異世界転生”が人気だと聞いてたんで、そういうのを書こうかなーと考えてたんですが……」

“異世界転生”は確かに現在もかなり人気があるジャンルですね。今も続々と新しい作品が投稿されています。ちなみにどういうストーリーを考えてたんですか?」

「僕は新宿で本好きが集まる文壇バーを経営してまして、その経験を活かしたいなと。そこで、異世界に転生した主人公が、ブ厚い本で敵をブン殴る格闘術『ブック神拳』を使う……というストーリーを考えました!」

「え、物理ですか? 魔導書を開いて魔法を使うとかではなく!?」

「物理ですね。百科事典のカドを使えばヨロイやシールドの上からでもダメージを与えられるチート能力です。敵が魔法を使う場合も、詠唱が終わる前に間合いを詰めて、頭蓋骨が粉になるまで殴り続けます」

「もうファンタジーじゃなくてホラーじゃないですか」

「文壇バーを経営なさってるなら、“バー”のほうにスポットを当てたほうがいいのでは?」

 

小説の書き方

櫻子さんの足下には死体が埋まっている (角川文庫)

『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』太田紫織

お屋敷に住む美人のお嬢様・櫻子さん。何と彼女は骨が大好き。骨と死体の状態から、殺人事件の謎を解いていく。

 

「設定は思いついても、いざ書こうとするとストーリーをどう転がせばいいのかわからなくて……。これって、多くの小説家を目指す人が同じ悩みを抱えているのではないでしょうか」

「そんなに難しく考えなくても大丈夫ですよ。エブリスタは”小説投稿”というより、”物語投稿”と捉えていただくと書きやすいです」

「小説じゃなくて物語!?」

「コエヌマさんがバーを経営しているなら、バーを始めたきっかけや、ステイホームでどういう危機を迎えたかなども物語になる。架空のお客さんを設定して、その人の話を書くのもいいですね。他人の人生や生活が垣間見えるものは面白いですから」

「そもそもエブリスタでは『エッセイ』も人気があるジャンルですから、日常そのものを書くという手もありますよ」

「う~ん、アニメ化されてキャラクターグッズで大儲けしたいので、小説が書きたいですね……」

「でも、実際に起きたことを友達に喋るとき、ちょっと話を盛ったりしますよね? その“盛り”をもっと増やして……例えば1割の事実をベースに、9割盛れば、もうそれは立派な小説ですよ」

「確かに! いきなりフィクションを創作するよりも、まずは日常生活をもとに書けば、いけそうですね。書く場合のアドバイスとして、どんなことを意識すれば、続きを読みたい人気作品になりますか?」

「エブリスタで人気の作家さんは、海外ドラマのように、毎回続きが気になる終わり方をさせていますね。いわゆる“ヒキ”がある、というやつです」

「あとは何ページかにひとつ、笑いどころとか、胸キュンのセリフとか、何かしらフックのある要素を入れることです。それを保てば、1000ページの長い作品であっても、読み続けられることが多いですよ」

「なるほど! そのほかに、人気投稿者になるためのコツがあれば教えてください」

「エブリスタでは、読者からページごとにコメントがもらえます。反応が良かったページが分かるので、それを踏まえて、『読む人は何を求めているんだろう』と考えながら書いていくと、高評価をもらいやすくなりますよ。特にページコメントやページスタンプという機能から反応を掴んでいくのがオススメです」

 

「『このセリフがウケたのか』とか『この展開はイマイチだったな』みたいに判断材料にするといいのではないでしょうか」

「あとは自分の好きな作家さんを見つけることです。フォロー機能があるので、そういった人とつながれば勉強になるし、自分の作品に反応がもらえたりする。その作家さんについている読者さんも、自分のことを知ってくれるかもしれません」

 

Perfect Crime : 1 (ジュールコミックス)

『Perfect Crime』梨里緒

会社でチーフプランナーとして活躍する前島香織には、上司と7年間不倫をしている秘密がある。そこへ配属されてきた「あの男」の罠に香織は落ちていく……。

 

「多くの場合、『小説なんて書いたことがない』という人がほとんどだと思います。うまい文章を書くコツはありますか?」

「僕は文章が下手でもいいと考えています」

「えー!」

「だってそれも味だから。あまり気にせずに好きなことを書き続ければ、きっと認めてくれる人が出てきます。個性や長所を大事にしてもらいたいです」

「マジメな人ほど『欠点を直さないといけない』って思いがちですが、すごくもったいないと思います。まず書いてみることが大事だと思いますよ」

「確かに、うまくなるまで待ってるより、ヘタでもいいからガンガン書いたほうが結果的にうまくなるし、上達の過程を見てきた人はファンになってくれそうです」

「作品も万人受けを狙う必要はなくて。10点満点で評価されるとしたら、ほとんどの人が1点をつけても、一握りの人が10点をつけてくれるような、突き抜けた作品を書いてほしいですね」

 

ヘタでもいいからまずは書いてみること、とっても大事ですね!

とはいえ、『完全に初心者だから最低限の文章ルールだけでも知っておきたい……』と不安に思っている人がいるかもしれません。現役ライターの僕が超基本的な作法をお教えします。

 

・「!」「?」の後にはスペースを入れる

悪い例:本当ですか?すぐ確認します!お待ちください。

良い例:本当ですか? すぐ確認します! お待ちください。

 

・「」内の文章の最後に、句読点は基本的につけない

悪い例:「こんにちは。」

良い例:「こんにちは」

 

・小説の場合、改行したら一マス空ける

悪い例:昨日そうめんを食べた。

    味はまあまあだった。

良い例:昨日そうめんを食べた

     味はまあまあだった。

※改行直後がカギ括弧(セリフなど)の場合は一マス空ける必要はありません。

 

・沈黙や間を表す「…(三点リーダー)」はふたつ用いる

悪い例:そんな事情があったのですね…。

良い例:そんな事情があったのですね……。

※三点リーダーは「てん」で変換すると出てきます

※同じく間を表現する「―」は「ダッシュ」で変換します

 

・表記を統一する

悪い例:うちには猫がいる。そのネコはとても元気だ。

良い例:うちには猫がいる。その猫はとても元気だ。

 

・アラビア数字は半角、固有名詞に含まれる数字は漢数字

悪い例:五十代の父は、第1次オイルショックを経験している。

良い例:50代の父は、第一次オイルショックを経験している。

 

「実際に作品を書いてみたとして、次はサイトに投稿するわけですよね。何か気をつけることはありますか?」

 「エブリスタに限りませんが、小説投稿サイトはスマホで読まれることが圧倒的に多いです。なので、文字がギッシリ詰まっていると読みづらくなってしまいます。適度に改行を入れるなど、スマホに合わせた見せ方を意識すると良いと思います」

「あぁ~、それはWEB記事でも同じですね。画面いっぱいに文字が表示されると、それだけで離脱されやすくなってしまう」

「あとは1ページに多く詰め込むのではなく、1000~2000文字くらいにして、こまめにページを区切っていった方が良いかもしれませんね」

 

 

ベストセラーも夢じゃない?作家デビューへの道のり

「エブリスタでの活動を通じてお金を稼ぎたい、小説家デビューしたいという人は、どういう方法があるんでしょうか」
「エブリスタでは、自分の作品を有料販売できます。それで月数十万円ほど稼いている方もいらっしゃるんです。投稿した作品がアニメの原作になって、原作料が支払われることも結構多いですね」

「あとはやっぱり、書籍化デビューですよね」

「おお、憧れの作家デビュー! 具体的にはどのように出版が決まるのですか?」

「大きく分けると二つあります。一つ目は、出版社さんと組んで、コンテストを随時開催しているので、そこにご応募いただく方法

「二つ目は、投稿された作品をスタッフが随時読んでいますので、面白い作品を出版社さんに『書籍にしませんか?』と提案しています。ですので投稿者の方に、ある日突然エブリスタから連絡が来て、『書籍化のお話があるのですが』ということもありえます

「すごく夢がありますね!」

「面白い作品が埋もれてしまってはいけないと常々思っていて。そのための取り組みもおこなっています。『特集』は週に一度、テーマに沿った面白い作品を、編集部がピックアップして紹介しています。年に48回も開催しているんです」

「もうひとつ、『コンテスト』というのもあります。こちらは公募型で、送ってもらったものの中から面白い作品を選んでいます。こちらは年間56回開催してるんですよ。狂気的な回数ですよね(笑)」

「スタッフが人海戦術で投稿作品を読んでいます(笑)」

「実際に人気が出て書籍化した作品というとどんなものがあるんでしょうか?」

「金沢伸明さんの『王様ゲーム』は、書籍・コミックで累計700万部を突破して、実写映画もヒットしました。他にも京都本大賞を獲得された望月麻衣さんや天花寺さやかさん、デビュー作『意味が分かると怖い話』が10万部を突破した藤白圭さんも有名です」

 

 

「投稿者の皆さんにぜひお願いしたいのは、登録時に有効なメールアドレスをきちんと入力してください、ということです。すごくいい作品があって、著者に連絡しようとしても、メールが無効になっているとすっごく悲しいので」

「僕も気をつけよう……。ところで投稿者は『作家になりたい!』『本を出したい!』などの思いを持っている人が多いんですか?」

「基本的に趣味で書いている作家さんがほとんどだと思います。書き方も人によって様々で、毎日1ページずつ更新する方や、土日にまとめて書く方もいらっしゃいますね。皆さん、職業やライフスタイルに合わせて投稿されています」

「昔は小説を投稿するというと、旅館に泊まり込んで原稿用紙をクシャクシャ丸めながら書くイメージがあったのですが、全然そんなことないんですね」

「はい、すごく気軽に始められるますし、続けられるようになっていると思います」

 

エッセイでもイラストでも何でも投稿OK

「小説投稿サイトは多数ありますが、エブリスタはどのような特徴があるのですか?」

「ユーザーの属性、投稿ジャンル、共に多様なことです。ユーザーは、20~30代の方が中心ですが、下は小学生、上は70代の方もいます。男女比は女性6・男性4くらい。男女どちらかに偏っておらず、性別のバランスがよいのはエブリスタならではではないでしょうか」

「ジャンルの数も非常に幅広いです。多くの小説投稿サイトでは、『異世界転生もの』が集中的に人気だったりしますが、それ以外も充実しているのがエブリスタの特徴です」

 

※エブリスタの投稿ジャンル

 

「確かに、めちゃくちゃたくさんジャンルがありますね! 小説だけじゃなく、エッセイとか空いてる時間につい読みたくなっちゃいますね」

「そうなんです。DVの旦那と離婚するまでのお話とか、アルコール依存症の方の断酒日記とか、心霊体験ものとかいろいろあります。『元風俗嬢が金持ち妻になりました』というエッセイは、大人気でコミカライズもされました」

「また、設定・プロットというジャンルでは、物語の設定やあらすじだけでもOKです」

「え、物語の設定だけでもいいんですか!? じゃあさっき話した『異世界の魔王をブ厚い本でボコボコに殴ったら英雄になったんだが』をそのまま投稿できるじゃないですか」

「そんなタイトルだったのか……」

 

5分後に驚愕のどんでん返し (5分シリーズ)

『5分後に驚愕のどんでん返し』エブリスタ編

「エブリスタ」が主催する「三行から参加できる超・妄想コンテスト」の入賞作品や、応募作から選りすぐりのものを集め、加筆・修正した衝撃の作品集。

 

「他にエブリスタの特徴というと、読者の存在を強く感じられるってことですね。例えば、ページごとにコメントを付けられる機能があって、完結するまでにたくさんの反応をもらえます。読者との心理的な距離が近くなりやすいんです」

「ざっと見たところ、コメントの内容に関しても好意的なものが多いですね。何か理由が?」

「二つの機能が大きな役割を果たしているのかなと。1つは“スター”。お気に入りの作品に対して、一日に一つ送れるんです。応援してくれている人の存在がわかると、頑張ろうという気持ちになるし、スターを送る読者さん側も温かい気持ちで応援できるのではないでしょうか」

「もうひとつ、“ページスタンプ”という機能は、作品のページごとにスタンプを送れる機能ですが、そもそもネガティブな感情を入れていないんです。だから殺伐とした空気になりにくいのだと思います」

「批判するのではなく、褒めあう文化が醸成されているのですね。温かい世界だ!」

「なので、気楽に書いて投稿してみてください。在宅時間が長いこのタイミングで創作をはじめた方も多いようで、エブリスタも今年の4月以降、作家数が伸びています。この機に小説を書きたいと思っていた方、ぜひ創作の世界に足を踏み入れてみてください」

「いま自分が考えていること・考えていたことを物語やエッセイで表現し、それが誰かの心を明るくさせる。エブリスタではこの流れを作り出し、創作の力で世の中を明るくしていければと考えています」

「僕もぜひ投稿してみます。今日はありがとうございました!」

 

終わりに

「小説を書いてみたい」「あわよくば本を出したり、お金を稼いだりしたい!」

そんな憧れを持っている方は少なくないのでは。エブリスタさんなら、創作を楽しみ、読者や他の投稿者と交流しながら、無理なく投稿を続けられると感じました。

在宅でできる趣味としても、本格的に小説家を目指したいという人も、ぜひ投稿してみてくださいね!

 

※エブリスタ公式HP

 

おまけ:コエヌマがおすすめするエブリスタの作品

婚活して離婚しましたが、何か?/kaku

セックスレスから離婚にいたった著者のエッセイ。かなり丁寧な心情描写、ところどころのユーモアで夢中になって読んでしまいました。

https://estar.jp/novels/25559275

 

私という人間の価値はどうやら失われたようです/最後の晩餐はいちごがいいです

すごいタイトルだが、なんとコロナの陽性疑いの人が綴るエッセイ。コロナに対して危機感のない母と暮らす筆者が発熱してしまい、PCR検査を受けて……周囲の人間に対する観察眼が鋭く読まされました。

https://estar.jp/novels/25635951

 

犬と勇者は飾らない/あまなっとう

前2作品とは打ってかわって、ファンタジー。モバゲー時代よりずっと人気作品で、3月に書籍化したそうです。非常に長いのですがポップで、笑いどころがこまめに用意された文章は中毒性が高く、めちゃくちゃ笑えました。

https://estar.jp/novels/22241232