ライターの大坪ケムタです。僕は昔からのプロレスファンなのですが、ここ数年昔とは違った白熱ぶりを見せているのが……女子プロレス!

 

今って、アイドルみたいにかわいい子や、モデルみたいなカッコイイお姉さんガチで格闘技やってるド強い選手までがリング上で闘い合う、新時代のエンターテイメントになっているのです!

 

 

 

いったいどんな女性が、何をきっかけにプロレスラーになり、戦い続けているのか? 人気団体・東京女子プロレスに所属する3人の選手に話を聞いてみました。

 

▼東京女子プロレス

DDTプロレスリングが運営する日本の女子プロレス団体。キャラクターの強い選手たちがそれぞれの生き様を見せる試合が人気に。近年、海外でも人気上昇中。

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▼今回登場する選手紹介

山下実優|2013年、東京女子プロレス旗揚げの日にデビューし、小学生から習っていた空手を武器に戦う東京女子のエース。団体の頂点・プリンセス・オブ・プリンセス王座の最多防衛記録を持つ。

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上福ゆき|東洋大学ミスコン準グランプリの後、グラビアアイドルとして活躍するも突如プロレスデビュー。アッパーなキャラに加え、高身長を活かした技が魅力。

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鈴芽|友達に誘われて東京女子プロレスを試合を見たことでファンになり、茨城県から上京、2019年8月にデビュー。その懸命なファイトでファン増加中。

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空手家、現役グラドル、デビュー1年弱の新人と、タイプの違う3人。彼女たちが上がり続けるリングの魅力とは?

 

 

レスラーになろうと思った理由もいろいろ

「今日はよろしくお願いします! まず基本的なところからうかがいたいんですが、みなさんなぜプロレスラーになろうと思ったんですか? まずは山下実優選手から!」

「わたしは小学生の頃から空手をやっていたのと、あとアイドルにもなりたくて……折衷案じゃないですけど気がついたらプロレスラーになっていたっていう感じです」

「折衷案(笑)」

「なるほど。“強い”と“かわいい”、どちらも活かせる職業は確かに女子プロレス……え? そうなのか??」

 

「地元が福岡なんですけど、東京まで何度もアイドルのオーディションに通ってて、その時に団体の人から声をかけてもらったんです。当時は東京女子プロレスもまだ旗揚げ前で」

「アイドルの世界とプロレスの世界ってぜんぜん違いません?」

「今考えてみたらぜんぜん違ったよね~! でもその時は『楽しそうだな』って、感覚的に決めました。今はこっちを選んで良かったなって思ってますよ!」

「では上福ゆき選手は?」

 

「私はグラビアとか芸能活動をしてた……というか今もしてるんですけど、一時期仕事の数が減って、ずっと港区女子してたんです」

「港区女子って何……?」

「港区女子は、主に六本木とか西麻布で飲みまくって、たまにタクシー代もらえたらラッキーみたいな活動を行う人のことですね」

「つまり遊び歩いてたってこと?」

「このままじゃよくないなと思って、マネージャーに『何かお仕事ないかなあ?』って聞いたんですね。そしたら『不動産やるか、めっちゃエッチな番組に挑戦するか、プロレスラーになるのがおすすめかな』って言われて」

「どんな三択だよ」

 

「その中だったらプロレスやりたいなって思って、現在に至る感じ!」

「みなさんプロレスラーになった経緯が特殊すぎません? 鈴芽さんは?」

 

「私は高校を卒業して普通に地元の会社に就職したんです。そこで女子プロ見に行かない?って誘われて、ひと目で東京女子プロレスのファンになりました

「よかった! 普通にプロレスラーに憧れた人がいて!」

「大好きで応援してるうちに、自分もやりたいなって気持ちが強くなって。だから、この二人のことも最初はファンとして見に行ってました」

「まだファンだった頃のこと憶えてるよ! 『一緒にチェキ撮ってください』って来てくれたよね」

「えっ!? 私はそんなこと言われてないんだけど! 好かれてなかったのかな……」

「そんなことないです! ただのファンが選手に声をかけられる機会って限られてるから……そのかわり、後楽園ホールで買った写真集持ってますよ!」

 

「ファンの頃は東京女子プロレスってどういうイメージでした?」

『全力で生きてるかわいい女の子たち』って感じでしたね」

「女子プロレスで戦い合う姿というのは、昔だと『怖い』というイメージがあったかもしれない。『かわいい』という言葉が出るのは今っぽいですね」

「選手と自分の年齢も近いし、見た目も普通の女の子に近い人たちが全力で戦ってるというのが、応援したい気持ちにさせられたんだと思います」

「そして自分もやってみようと。『痛そう』と思って躊躇することはなかったんですか?」

「不思議と思わなかったんです。痛いよりも、格好良さのほうが勝っちゃって。私もやってみたい!って」

 

プロレスは痛い!それなのに仲間で殴り合えるのは…

「とはいえプロレスって『痛い』ですよね?」

  「めっちゃ痛い!」

「見て想像するより、体感するともっと痛いんですよね。観客の頃は気づかなかったけど、当たり前に耐えてる選手はすごかったんだなって、最初の頃は痛感しました」

 

ケガやアザが絶えないそうです。痛そう!

 

「普通に生活してると、足の小指をタンスにぶつけただけで、もう立ってられないくらい痛いじゃないですか。プロレスの技ってその何倍も痛いですよね? よく耐えられますね」

「試合してる時はアドレナリンが出てるんで、痛いけど気づかないというか……。次の日とかに痛さがジワジワきますね」

「試合中の痛みは『どれくらい痛いのか理解はできてるけど、意識の外にある』みたいな感じ。試合後の方が痛いです」

 

 

「中でもこんな技がイヤだ、ってありますか?」

「やまぴー(山下選手)の走ってきて顔パーンて蹴るやつ!」

※山下選手の得意技・クラッシュ・ラビットヒート

「山下さんの蹴りはぜんぶ痛い!!」

「蹴ることが仕事なので」

「なんて仕事だ……」

「痛みとは別の種類で嫌なのは、ジャイアントスイング(相手の足を掴んで振り回す技)ですね」

 

東京女子プロレスofficial YouTubeチャンネルより

 

「三半規管系はつらいですね。鈴芽は小さいから特によく回るんですよ(笑)」

「半笑いで言わないでください」

「ジャイアントスイングは回されてるうちに視界が狭くなるんですよね。アレは何なんだろうね?」

「された人しかわからない感覚! 山下選手は個人的にイヤな技ってありますか?」

「ハイパーミサヲって選手がいるんですけど、試合中になぜかかき氷を食べさせられたり、スプレーかけられたり、突然ぐるぐるバット対決させられたりして、マジで気分悪くなってダメですね……。技というかハイパーミサヲが苦手!」

 

 

ハイパーミサヲ選手とはこういう選手。もう技じゃない…。

 

「でも挑まれると山下選手は受けて立ってしまうんですね」

「そうなんですよ。わたしの武器がキックであるように、彼女はアイデアが武器だから。それを受けて立つのがプロレスですよね。ただ、最後はわたしが勝っても、試合の印象で負けてることもあって、本当に悔しい!」

「そういう世界観の戦いもあるのがプロレスですね」

練習し始めて最初に壁になったのがロープワークです。あれが苦手で……」

「リングに張られたロープで反動つけて走るやつですよね」

「あれって簡単に見えますけど、ロープの中身はワイヤーなんで硬いんですよ。慣れてない人はムチャクチャ痛いですよ」

「実際やってみるまではもっと柔らかい素材だと思ってた!」

「上手に当たらないと、背中に2本ロープのアザが出来て、寝れないくらい。簡単に見えてたことでも痛いんだなってことに気づいて、恐怖心がわきましたね」

 

「それにしても、今こんな仲良く話してる3人もリング上では殴り合うわけですよね。普通は意味分かんないと思うんですよ」

「信頼関係があるから戦えるって部分はあると思います」

「やまぴーには何やっても大丈夫って思ってるから、思いっきりやれます! 相手が先輩のほうが気を使わなくていいですね」

あなたは誰が相手でも気を使ってないでしょ!」

 

「プロレスはお互い殴ったり蹴ったり、それを耐えたりする中に、気持ちが見えるからお客さんは楽しいんだと思うんですよ。だからわたしは後輩だろうが手加減せず全力でやります」

「先輩たち、今はこんなに楽しい感じで喋ってくれてますけど、試合になると顔つきがメチャメチャ変貌するんですよ! 最初の頃は『あの優しい先輩がこんな顔に!?』って思って超怖かった」

「でも先輩たちと練習して、試合をしていくうちに『背中で見せてくれてる』のがわかるっていうか。凄い人たちが今こんなにフランクに喋ってくれるんだなって思うと、リスペクティングしちゃってます!」

 

ひとりずつ違うトレーニングでなりたい自分になる

「戦うための体を作るために、皆さん普段から体を鍛えてると思いますが、プロレスってどんなトレーニングしてるんですか?」

「プロレスのトレーニングは基本『受ける練習』ですよね。自分が技をかけられた時の痛みや衝撃を、ゼロにはできなくても軽減することができますから」

「瞬時に受け身を取れるっていうのはレスラーの生命線なので、訓練は常にやってます」

 

「プロレスラーと言えば体をつくるのも仕事ですよね。こちらの練習場には筋トレの器具も揃ってますが、ジムに行かなくてもここでトレーニングできるのはいいですね!」

「そう思って私はここで筋トレしてますが……」

「ゆきはここでは筋トレしてませ~ん」

「え? なぜ???」

ジムはお洒落なところでやりたい。あと器具の使い方とか覚えられないので、パーソナルトレーナーがいるところじゃないと無理」

「そんな理由!?」

「それに、『頑張れ!』って声かけてもらえないとテンション上がらない!」

 

「鍛え方はひとりひとり違うんです。基本的なプロレスの練習以外に、わたしだったら他のジムに行ったり、空手の道場に行ったりもしますし。それぞれの体のスタイリングは個々で任されてる部分があるので」

わたしはマッチョな体よりも細身でいたい。でも技には耐えられる、っていう体を目標にしてますね。それが自分らしいスタイルだと思うから」

自分が描くレスラー像がそれぞれ違ってて、それに応じて鍛え方も変わってきますから」

「東京女子プロレスはいろんなタイプの選手が参戦してますよね。格闘技タイプにパワーファイター、空中技で魅せる選手、飛び道具タイプ……」

目標とするレスラー像を決めるのがいちばん難しいかもしれない」

 

「ただ強さを目指すだけでなく、自分がなりたい姿にどう近づけていくかが大事なんですね」

「わたしも自分のなりたいレスラー像が決まったのは最近ですもん。最初の頃は『かわいい』も『かっこいい』もどっちにも見られたくて、ブレブレでした!」

「山下選手にもそんな時期が……」

「色々模索して、結局、小さい頃からアクション映画とか好きだったし『やっぱりわたしの根本は“かっこいい”だな!』って思って、今のスタイルに落ち着きました」

「ゆきはもう、自分を見て元気になってもらえればいいなと思ってますね。わたしみたいな子でも頑張ったりできるし、それを見て『元気出た!』『楽しかった!』って気持ちでハッピーになってくれたらいいなって」

「ただ、上福選手も『楽しかった!』だけではなく、試合に勝ちたいという気持ちもあるんですよね?」

「もちろん! 初めてタイトルマッチやった頃から、特に『勝ちたい』って気持ちが出てきました。その感情があるかないかで、見てもらう人の気持ちも変わるし、わたしももっと頑張れるな、と思ったんですね」

「なるほど。いちばん新人の鈴芽さんは、なりたいレスラー像は決まってますか?」

戦ってる時はかっこいいと思われたいですね。でも……憧れと自分ができることは違うかもしれないので、それも含めてこれから見つけていけたらと思います」

「目指すレスラー像というのは、戦い方や体の作り方だけではなく、自分をどう見せるかというファッション的な部分もあると思います。ということはコスチュームも重要になってくるのでは?」

 

「コスチュームは大事ですよ! お客さんに見てもらう仕事ですから」

「山下選手は洗練されたザ・レスラーってデザインだし、上福選手は素材がデニムだったりシルエットもスタイルの良さが強調されてたりしますよね。鈴芽さんもキャラに合った華やかでかわいい感じだし」

「嬉しい!ありがとうございます!」

「三人それぞれキャラを活かしたデザインですが、そういったコスチュームは選手が自分で考えるんですか?」

「はい! それぞれがデザイナーにイメージを伝えて作ります。だからデザインセンスも問われますね」

「わたし、コスチュームのセンスがないんですよね……。『これとこれの要素を足してください』って言ったのが、他の人からすると真逆の要素だったりして。いつもデザイナーさんを困らせてます……」

「鬼の山下選手にも、コスチュームデザインという弱点があった……」

 

プロレスやってて「嬉しい瞬間」は?

 

 

「では皆さんがプロレスしていて嬉しい瞬間ってどんな時ですか?」

「わたしは戦ってる時が幸せなので、痛い!って感覚も含めて楽しいし、極限に追い込まれれば追い込まれるほど幸せを感じるんですよね~」

「怖……」

「サイヤ人じゃん」

「でも、他人が痛いのを見るのは苦手なんです。他人が蹴られてるのを見ると『うわあ!』ってなりますね。自分が蹴られるのは平気なんだけど」

「実はドMなの?」

 

「あとプロレスならではのことなんですが、戦ってる最中にダイレクトに声援が聞こえてくるので、それは嬉しいですね。技のタイミングでの掛け声とか、苦しい時に『頑張れ!』って言ってくれる。ありがたいです」

「確かに声援は、他の格闘技よりエンタメ性が強いプロレスならではかも。上福選手は、プロレスでここが楽しいっていうのはありますか?」

「ゆきは褒められるのが嬉しいですね! お客さんにも仲間たちからも。わたしは褒められないと伸びないんで!」

「外からの褒め言葉もあるんでしょうけど、自分でも成長してる実感を感じたりしませんか?」

「ありますね。ゆきはこれまで部活もやったことないし、何かひとつの事を続けるとかずっと出来なくて。特に集団で何かをやるってのが苦手で、本当になかったんですよ」

「集団行動に向いてない人だったんですね」

「でも今は大会のポスター貼りとか、特にお給料が発生するわけでもないことを、選手同士で自主的にやったりするんです。『家族みたいですごく素敵~!』って思えますね。コミュニケーションと団結力がすごくいいなって!」

 

「鈴芽選手はまだデビュー10ヶ月ですけど、デビュー戦の時はどんな心境だったか覚えてます?」

「前日くらいまで緊張してなかったのに、当日急に『どうしよう!』って不安になって、試合の直前までずっと泣いてました

「情緒がヤバかったよね~」

「でも、いざリングに立ってみたら、すごい笑顔になれたんです。周りからも『緊張してるように見えなかった』って言われました。

 

「とはいえ、試合が終わったらまた泣いちゃったんですけど。安堵と感動で……」

「泣いてるとこ、みんなで写メ撮りました!」

「『泣いてる~(笑)』って言ってね」

「ひどくないですか?」

「ひどいです」

「みんなその感動は経験してきてるから、記念にと思って……」

 

「では最後に、あらためて皆さんにとって女子プロレスの魅力とは何でしょう?」

「昔は女子が格闘技なんて……という空気がありましたけど、今って女子の活躍も目立つようになってきましたよね。強い女性、戦う女性に憧れる人が増えてきたのかなって」

「プリキュアを筆頭に、戦う女子が主人公のアニメとかも増えてますもんね」

「その中で、女子プロ独自の特長として『ポップさと強さの同居』があると思います。努力して、勝つために傷だらけになって戦う姿……そこに女子ならではの美しさやかわいさが同居してるのが魅力ではないでしょうか」

「確かに! 上福選手はどうですか?」

「東京女子プロレスって、港区女子もいれば空手女子もいるし、すごいかっこよく戦う人もいれば、おちゃらけてるひともいて、自由なんですね」

「それは今日のインタビューでもはっきりわかりました」

「良い学校いって就職しなきゃとか、結婚や出産を周りに煽られてるような人が女子プロレスを見たら、『どう生きたっていいんだな』って思ってもらえるはず。みんな頑張って好きに生きていいんだ!と思える姿を見れるのが魅力だと思います」

「では鈴芽選手はどうでしょうか?」

「私が初めて女子プロレスを観戦した時、試合や選手を見てるだけで、自分も何かに挑戦してみようとか、今やってることを頑張ろう、と感じ取れたんですね。プロレスを知らなくても感じるものが絶対ある! 知らない人もぜひ一度見てほしいです!」

「なるほど、三者三様の答えでしたね! 今日はありがとうございました。これからも東京女子プロレス応援してます!」

 

まとめ

プロレスとは強さを求めるもの、という昔ながらのイメージとは違った3人の話。

「ポップさと強さ」「全力で生きてるかわいい女の子たち」「みんな頑張って好きに生きていいんだ」…意外だった人も多いんじゃないでしょうか。

 

新しいエンターテイメントとして進化し続ける彼女たちの話を聞いて、さらに女子プロレスが好きになったインタビューでした!

 

東京女子プロレス公式サイト