ブランドのファンが、大人になって再会する場所を

「アーバンリサーチがこんなキャンプ場を始めた理由が気になるのですが」

「タイニーガーデンは『若いころアーバンリサーチのファンだった人が、仲間たちと再会するための場』として作ったんですよ」

「大人になって再会する場所、ですか」

「就職して都会に住むようになると、アウトドアの機会も減るじゃないですか。家が狭くてキャンプ道具を置けなかったり。けれどキャビンがあるタイニーガーデンなら、テントを持っていなくてもキャンプに来られる。そういう気軽に集まれる場所を作りたかったんです」

「学生時代の友人で集まって、久しぶりにキャンプしよう、みたいな」

「ええ。ですからターゲットは日本国内にいるアーバンリサーチのファンの方々を想定してます。レジャー目的だけじゃなくて、平日は法人の研修や合宿でも使っていただいてますよ。Wi-Fiや電源のある会議スペースやワークスペースもありますので、最近のテレワーク需要にも対応しています」

 

「会社員の知り合いに話を聞くと、出社するのは月に数回で、あとは自宅作業みたいな人も相当増えてますね。仕事がオンラインで完結するなら、キャンプ場に滞在しながら仕事したい!って欲求は高まってると思います」

「我々としても、ワーケーションのお客さんを増やしていきたくて。蓼科の自然のなかでリフレッシュしてほしいですね。実際、フリーランスの方が拠点として利用されるケースもあって。キャビンやテントで寝泊まりして、昼間はカフェで仕事もできますから

「自然の中で仕事するとリフレッシュになるし、いいアイデアも出るはず。都会よりは圧倒的に密じゃないですしね……」

「レジャーに限らない使い方や時間の過ごし方は常に考えてます」

 

「最近、服以外のライフスタイルも込みで提供するアパレルブランドが増えてる気もするんです。食品や器をお店で扱ったり。アパレル業界の変化や、それこそ危機感みたいなものがあるんでしょうか」

「個人的な意見も入るのですが……やっぱり服の市場だけでは、限界があると思うんです。洋服の流行は毎シーズン変わっていく。さらにライフステージが上がるにつれて、お客さんが趣味にかけられる時間も減ってしまう。服以外のライフスタイルに展開するブランドが多いのは自然な流れかもしれません」

「なるほど。それもあってか、最近ではローカルに力を入れるブランドも多いですよね」

「うちも『長野という土地で何ができるか』を考えています。宿泊施設として癒しを提供するのはもちろん、それぞれに合った自然との距離を保ちながら過ごしてもらいたいなと」

「タイニーガーデンを通じて長野の魅力を発信していくようなことも考えていますか?」

「はい。例えばこの10キロ圏内だけをとっても、八ヶ岳に象徴される山にまつわる文化や、諏訪大社の信仰があります。掘れば掘るほど面白い文化が出てくるような土地なんですよね」

「ジモコロで以前、諏訪大社の御柱祭は取材したことがあります。1200年以上続く歴史も、大木に乗って山を下りる内容も、他にはないヤバい文化ですよね」

「あとは全国的な知名度はまだまだですが、『寒天』の産地だったりもするんですよね。この土地を、アーバンリサーチというフィルターを通して自由に発信していくのがタイニーガーデンの使命だと思っています」

 

都市と地方をつなぐ橋になりたい

「タイニーガーデンはおしゃれだけどカッコつけすぎない、ほどよい感じがありますよね。ローカルでは、オシャレすぎると近寄りがたい場合もあると思うんです。東京の価値観をそのまま持ってきてもうまくいかないから、その土地に合わせてローカライズさせないといけない」

「そうですね。ここのコンセプトとして、都市と地方をつなぐ橋になることを意識していてます。僕自身、以前は長野で観光の仕事をしていたので、その経験を活かしたいなと」

「都会と地方をつなぐ橋、面白いですね。そういえばタイニーガーデンのショップは都会の店舗とあまり変わらない品揃えですよね?」

商品での差別化はあまり考えてないんです。施設オープンに合わせて『EKAL』というブランドをスタートしましたが、アーバンリサーチの全国30店舗でも扱っています。まずは、都会の店舗を通してタイニーガーデンの存在を知っていただき、実際にここへ来てもらって、長野を知ってもらえたら最高です」

「なるほど! そうやって都市から地方への流れを作ると」

「長野の風土を感じられるように、カフェレストランには地元のクラフトビールやコーヒーを入れています。もっと生産者の顔がわかる形で地元の野菜を紹介するとか、伝え方に関してはまだまだ模索中ですね」

 

「お客さんに関しても、もっと地元の方がふらっと立ち寄るような場づくりをしたいと思ってます。ちょっとお茶しに近所の人が来るような」

「宿泊施設だけだと、地元の人はなかなか来づらいですもんね」

「そうなんですよ。地元の人に気軽に来ていただくために、ショップやカフェをやっています。ただ、地元の方も『どんな場所か気にはなってるけど、なかなか来れない』みたいな感じがまだ多いと思いますね」

「地元のじいちゃんばあちゃんがお茶を飲みに来て、都会から来たお客さんと世間話する……みたいな光景が生まれたら最高ですね」

「そうですね。外の人も中の人も来てくれることで、お互いの日常と非日常が感じられて、ゆるやかに混ざっていくような空間にしたいです。まだまだ始まったばかりなので、これから頑張ります!」

 

キャンプをして温泉に入り、そして地元の風土や文化に触れる……。

身体的欲求だけでなく知的好奇心まで満たしてくれるキャンプ場・タイニーガーデン。騒がしい世の中に疲れてしまった皆さん、ぜひチェックしてみてください。

 

アクセス情報などはこちら↓

TINY GARDEN 蓼科

住所:長野県茅野市北山8606-1 TEL:0266-67-2234

アクセス:電車の場合→JR「茅野駅」よりバスで約30分「蓼科湖」下車後、徒歩4分 / タクシーで約25分
車の場合→中央道「諏訪IC」もしくは「諏訪南IC」より約30分
※新宿から約2.5時間、名古屋から約3時間!

http://www.urban-research.co.jp/special/tinygarden/

 

僕はもうひとっ風呂浴びてから帰ろうと思います。それではまた〜!

 

写真:小林直博
インタビュー構成:なかいりよう