地方でウケる「なんでだろう」って?

「あちこち旅されてるなかで、個人的に『なんでだろう』って思うことはありますか?」

「うーん……シャワーの水圧弱すぎるところなんでだろう、とか? 水も疲れちゃってんのかな、みたいなところがたまにあって」

「ああ、めっちゃわかります…ジャーッッ!!!じゃなくてショワァ…みたいな。あれストレスですね」

 

【テツandトモのなんでだろう その2】

地方のホテルでシャワーの水圧弱すぎるところがあるのなんでだろう〜?

 

「こういう旅あるあるはネタでやらないんですけどね(笑)。わかる人はなかなかいないので…」

「や、出張多い会社員の方は今めっちゃ反応してるんじゃないですか? でも、例えば北海道と福岡でやるときは、ネタの内容も変えるんでしょうか。ご当地ネタを入れたり」

「入れますよ! 現地に行ったらできるだけ地元の人と話しますね。『あそこのラーメン美味いんだよ』とか、そういうのを少しネタの中に取り入れると、やっぱりウケるんですよ」

「なるほど、地元あるあるというか」

「ただ、結構バランスが難しいですね。知名度が高過ぎても低過ぎてもダメで。例えば愛知で『ひつまぶし』は当たり前過ぎて、笑いに繋がらないんです」

 

【テツandトモのなんでだろう その3】

メジャーすぎる「地方あるあるネタ」はウケないのなんでだろう〜?

 

「あー、他県の人でも知ってる名物とかだと。それは意外性がないから?」

「ええ、お客さんが『なんでそれ知ってるの?』って思うかどうかが大事なんだと思います。その驚きが、笑いに結びつくのかなと」

「そういう情報を探すのに、事前にネットでも調べたりします?」

「一応します。その上で、現地の人に直接話を聞くのが重要ですね。ネットの情報がヒントになって、そこから話が広がることもあるんですよ」

「地元の人には当たり前過ぎて、いきなり聞かれても出てこないってパターンはありますね」

「ただ、ネットの情報が全部正しいわけじゃない。例えばWikipediaで僕の血液型がA型って書いてありますけど、本当はB型(笑)。そういうのもあるから、自分で確かめるのは重要じゃないかな」

「Wikipediaは、この記事を読んだ誰かに直してもらいましょう…(笑)」

 

【テツandトモのなんでだろう その4】

本当はB型なのに、wikipediaにA型って書いてあるのなんでだろう〜?

 

「髪を洗う時に頭を浮かせる人なんでだろう?」

「やっぱり一次情報が大事で、現場に行かないとわからないことだらけ。皆さんが普段から目にしてたり、思ってるけど口にしてなかったりすることが僕らの『なんでだろう』に繋がるんですよね。企業さんに呼ばれてやるときもそうで」

「企業でのネタって、何か具体例を教えていただいたりできますか?」

「そうですね…」

 

「お、ネタ帳ですか?」

「はい。もう何十冊とあります。あ、これとかどうかな?」

「うん、企業秘密なのであまり出したくはないんですけど…(笑)。例えば、全国の美容師さんが集まる大会にゲストで呼んでいただくことがあって。美容室で頭を洗う時、気を使って頭をちょっと浮かせちゃう人が結構いるそうなんですね。でも、それって美容師さん的には困るらしくて」

「首を伝って水が体にかかっちゃったりね。だから」

 

「洗髪台で頭を浮かせる人なんでだろう〜」

 

「って感じで。そしたらもう、大ウケですね」

 

「『そうそうそう!!!』って」

 

「ハハハッ、なるほど!」

「今本当に笑ってました?」

「すみません、テツさんの勢いに合わせました。でも業界あるあるってことですよね。それも事前にヒアリングを?」

「はい、打ち合わせでインタビューみたいに聞きまくります」

「そういうものを見つける嗅覚とか、ネタの打率って上がってますか?」

「だいぶ感覚はわかってきましたね。その日のお客さんにも合わせたり。地元のお祭りだと、お客さんのおじいちゃんおばあちゃんが行く場所をネタに入れると『知ってくれてるんだ』って温かい空気になります

「きっと嬉しいですよね。調べてきてくれたんだ!と」

お客さんとの距離感ですよね。僕らも同じ空気を一緒に楽しみましょう、と思ってやってるので、地元あるあるは距離感を縮める材料にもなる」

「海外の大物アーティストが来日したとき、その土地の方言をちょっと言うだけで会場が沸くみたいな」

「そうそう、一言でウケちゃう。方言の場合、地方ごとに微妙に違ったりするので、意外と難しいんです」

「『なんでだろう』探しは大変な作業なんですねえ」

 

【テツandトモのなんでだろう その5】

海外の大物アーティストがその地方の方言を言うだけで、会場が沸くのなんでだろう〜?

 

砂漠じゃないから、何かある

「僕には『何もないの呪い』って持論があるんですけど」

「急に中二病ですか…?」

「いやいや、自分の生まれ育った街が好きじゃないって若い子に地方で会うんですよね。その原因のひとつに、親が『この街には何もないから』って言うのを聞いて育ったからじゃないかと……」

 

【柿次郎のなんでだろう】

地方出身の人が「地元には何もない」と思いがちなの、なんでだろう?

 

「なるほど、『何もない』って親の言葉がまるで呪いのように」

「で、地元を出て一回外を経由したことで、地元の魅力に気づく人も多いな〜と思ってて」

「僕は山形出身ですけど、そうかもしれないですね。地元にいた頃は家の近所と学校しか知らなくて、『僕の街ってどんなところだろう?』って好奇心もなかった。東京に出た後で魅力に気づくという」

身の回りにある風景って、当たり前になってるんですよね。だから魅力に気づかない

「でも一回出なくても、ちょっと目線を変えただけで気づける。山形は温泉が35市町村全部にあるとか、『板そば』めちゃくちゃ美味しいとか」

「板そば、僕も好きです! 350gくらいあるのに地元のじいちゃんばあちゃんがペロって食べるのなんでだろう?って思ってました」

「それは単に旨いからじゃない(笑)? テツの地元は滋賀だけど、いいところたくさんあるでしょ」

 

「びわ湖大津ふるさと観光大使」に就任した際のメッセージ動画

 

「琵琶湖のある大津市の観光大使もやらせていただいてるんですけど、自然と、歴史的な建物と、近代的な部分と3つが融合してる素晴らしい県だと思います。鮒寿司も匂いは強烈だけど美味しいし」

「山形もだけど、発信下手なところはあるかもね」

「関西だと京都や大阪が目立ちますね」

「全国で話を伺っていると、『うちは何もないのよ』って言われることもあります。でも、ずーっとしつこく聞いていたら、何か必ず出てくるんです。だから、どんな土地でも…」

 

「砂漠じゃないんだから、絶対何かある」

 

「(碇ゲンドウみたいに言い切った…!)」

「砂漠だって、何かあるかもしれませんし」

「『何か』は名物の観光地や工芸品と思いがちだけど、近所の店や地元のおじさんや、そういう何気ないところが面白かったりするんですよね」

「近すぎると、そういう魅力に気づきづらい。そこで外の人間の好奇心が役に立ったりしますね」

「好奇心があれば人生が充実していろんなものが楽しめますよね。知れば知るほど好奇心や想像力も豊かになりますし」

「やっぱり、何でも『いかに面白がるか』じゃないですかね。僕は釣りが好きなんですけど、地元のおじさんに釣れるポイントを聞くんですよね。でも、おじさんの言う通りにやってもうまくいかないことがあって」

「そこで『なんでだろう』と」

「そうそう! その『なんでだろう』はきっと終わらないので、僕は釣りを死ぬまでやり続けると思うんです。それって仕事でも趣味でも同じなはずで」

「より多くの『なんでだろう』を持ってるほうが楽しい人生になる。これは大事な話ですね。今日はありがとうございました!」

 

おわりに

営業のステージにプライドを持ち、全国の地元を沸かせまくっているテツandトモさんの語る言葉はめちゃくちゃカッコよかったです。

特に「砂漠じゃないんだから、絶対に何かある」という心強い言葉は、きっとローカルの人たちを勇気づけるはず。

 

そして何事においても「面白がる」ことが、人生を楽しむ秘訣だと思います。だからこそ「なんでだろう」はとても大切な視点です。

 

「なんでだろう」と唱えることで、きっと好奇心と疑問のスイッチが入り、目の前の景色が違って見えてくるのでは? 皆さんも「なんでだろう」でぜひ人生をより楽しんでください!

 

【テツandトモさんのお知らせ】

初の絵本『なんでだろう』が世界文化社から発売中!

2019年10月2日に新しいCD『テツandトモの 元気になれるの なんでだろう?』がリリース!

 

構成:友光だんご