背中越しに失礼します、ライターのいぬいです。今日は頼れる兄貴分に悩みを相談しています。

 

「ねえちょっと、聞いてくださいよ……」

「どうしたんですか?」

「実は最近、気になる女の子と出会って。いろいろ話すうちに、京都でデートすることになったんですよ」

「良いじゃないですか!」

それが、その子が実はお酒が飲めないってわかって……。でも、僕はお酒飲むのが大好きなんです。大人になってからデートなんてお酒のある場所しか行ってないので、他にどんな場所に誘って良いかわからなくて」

「えっ、それなら良いお店が京都にはたくさんありますよ!」

「おおおさすが、京都のホテルで働く田中さん!街に詳しく人に温かい……」

「わざとらしい紹介……」

 

【登場人物紹介】

いぬい……酒場&酒好きの26歳ライター。飲み歩きと「酒場でのおしゃべり」が好きで、立ち飲み屋を3軒くらいハシゴする

田中幹人……「最果ての旅のオアシス」をコンセプトとした京都のホテル『HOTEL SHE, KYOTO』スタッフ。現場に立ちながら、同ホテルのマーケティングを担う。ブティックホテル研究のほか、HIPHOPが大好き。Twitter:@mikito_tanaka

 

「ちなみに乾さん、『モクテル』ってご存知ですか?」

「……モクレンのカクテル?」

「おいしそう。でも違います。いま、世間ではノンアルコールカクテルのことを『モクテル(mock coctail = 模擬のカクテル)』と呼んで、いろんな美味しいメニューが作られているんです。海外や東京では専門のバーができたり、お店で『ノンアルコールを楽しむ』選択肢が増えてきているんですよ」

【FOCUS IT.】ノンアルコールバーという新しいカルチャー。でもアルコールを敵視することは絶対しません。[HOUYHNHNM]

ニューヨーカーはお酒ではなくジュースではしご? 拡大するノンアルコール市場とミレ二アル世代がコミュニケーションに求めるもの[AMP]

「酒場でお酒を飲まない!?」

「意味わからない、って顔してますね」

「だって……酒場って酒を飲みにいくところじゃないですか?ノンアルコールって言っても、烏龍茶とかコーラくらいしか……」

「じゃあ騙されたと思って、僕と飲みに行ってみましょう!」

「(まあ飽きたらビール頼めばいいか……)ちなみに田中さんは普段飲まれるんですか?」

「いや、僕はまったくアルコールがダメなんです。でも酒場は好きですよ!さあ早く飲みに行きましょう!」

「ええっ! 下戸なのに酒場好き?どういうこと……!?」

 

あれよあれよと話は進み、下戸の田中さんと、お酒大好きなライター・乾のふたりが、「京都のノンアルコール酒場」を巡って来ました。

 

☆「ノンアルコール酒場MAP in 京都」
これから紹介する3軒に加えて、美味しいノンアルコールドリンクが楽しめる京都の酒場を調べました。
こちらのMAP&リストは記事の2ページ目で紹介しています!

 

下戸だって「飲む」を楽しめる『鉄板とお酒 宗や』

「最初はこちら、河原町から少し南に下って、住宅街にひっそりとある『鉄板とお酒 宗や』さんです!」

 

『鉄板とお酒 宗や』
鉄板料理の数々と、店主が目利きした野菜料理、そして豊富に揃えた日本酒が人気の酒場。夜遅くまで営業しているので、深夜には近隣の飲食店主たちの拠り所に。
営業時間:18:00~27:00/「鉄板とお酒 宗や」(食べログ)

 

「僕、一度来たことあります!鉄板焼きとか焼き野菜のメニューがめちゃくちゃ美味しいんですよね。でも、ノンアルコールもありましたっけ?」

「ふふふ、早速出してもらいましょうか!」

 

左から、ゆずサワーとキウイサワー(いずれもノンアルコール、600円〜700円)。季節のフルーツを使った期間限定メニューも。

「ビジュアルも華やか!これもモクテルですか?」

「これはノンアルコールサワーです。このお店ではビールや日本酒の他に、新鮮なフルーツを使った生搾りサワーも提供されているんですが……お願いしたらノンアルコールで作ってくれるんです

「知らなかった! では早速、今日はよろしくお願いします」

 

ノンアルコールでの乾杯、新鮮……!

 

「果肉もたっぷり贅沢に入ってて美味しい! これは……焼酎を足しても美味しそうですね……」

「アルコールから離れてください。ちなみに、ノンアルにできるサワーはレモン、グレープフルーツ、キウイ、すだち、トマト、生姜、ラムネ……などなど種類が豊富。選ぶ楽しみがあるのもいいでしょう?」

 

店主の吉田さん。日々鉄板の前に立ってアテを作ります

「そうそう、良いフルーツを直売所で見つけたら季節限定のメニューも増やしたりするんですよ」

「店主の吉田さん! それにしても、なぜノンアルを選べるようにしたんでしょう?」

「ウチは20代から30代前後の若い方もなじめるような、新しくて『カジュアルな酒場』を目指しています。あくまでメインは日本酒などのお酒ですが、いろんな方に間口を広げられたらと」

 

店内には、多彩な銘柄の日本酒がずらりと並ぶ冷蔵庫が。自分で銘柄を見ながら、何を飲むか考えるのも楽しい

「なるほど〜料理も豊富で悩みますね! 何から食べようかな」

「よかったら、定番の煮込みからスタートしてください。ウチは鉄板料理が出るまで時間がかかるので、牛すじ煮込みを最初に頼んでもらうんです。その間に、お酒に合う味に仕上げた『焼き野菜』や『鉄板料理』をお出しします」

 

「まず頼んで欲しい」という、定番の「牛すじと大根の煮込み」(550円)

 

お酒に合う鉄板料理の数々が、このお店の魅力。写真は「九条ねぎとアギ(牛あご肉)」(700円)

 

野菜料理で有名な京都の名酒場「五十棲」グループ出身の吉田さんによる料理は「パフォーマンスにも素材にも、こだわってます」とのこと。写真は瞬間燻製を施した「丸ごと玉ネギとベーコン」(700円)

色んな料理を少量ずつ味わえるのも酒場のいいところですよね。お酒なしで夜ご飯を食べようとすると、どうしてもカレーとかラーメンとか、単品のご飯になりがちですし」

「そういえば田中さん、下戸だけど酒場好きなんですよね」

「そうですね。よく一人でも行きますよ」

「その気持ちがピンと来なくて。僕自身はお酒が飲めるので食べて飲んで、酔って話して……と楽しむんですが、下戸の田中さんはどう楽しんでるんですか?」

 

「酒場にある独特のグルーブ感が好きなんです。お酒や美味しい料理があると、人と話す内容もいつもより熱っぽくなったり、変化が起きたりする。だから話したい人がいる時や、友人から相談を受ける時は僕から酒場に誘うことも多いですね」

「ああ〜なるほど。僕が酒場好きなのも『ちょっとだけ自分を解放できる』からなんです。いつもは声が小さくて、皆のおしゃべりを見守ることが多いけど、お酒の場ではちょっとだけ気楽に『あの話、してみようかな』とチャレンジできたり」

「そうそう、その感じが『グルーブ感』だなと思っていて。みんなでお酒や料理を囲んで、リラックスしたコミュニケーションが取れるのが楽しい。もちろん、悪酔いする人を相手にするのは嫌ですけどね(笑)」

「田中さんの『お酒のある場が好き』な感じ、ヒシヒシと伝わってきます」

「その一方で、飲めない辛さもあって。この前、知らないバーに一人で行った時、ソフトドリンクだけ頼もうとしたら『お酒は頼まれないんですか』と聞かれたんです。『飲めない』と言うと『じゃあなぜバーに来たの?』と思われる気がして、ちょっと嘘をついてしまいました

「嘘というと?」

「『今日は車で来てるんですよー』って。咄嗟に出たんですけど、後から『なんでそんな嘘をつかないといけないんや……』ってモヤモヤしてしまって。多分、バーにいるのにお酒が飲めない自分に罪悪感を感じたんだと思います。お店の人と話したりを期待して行ったけど、結局、その日はあまりお話もできず」

「うわーー。バーという場を楽しみに来てるのに、自分を否定しないといけないのはしんどいですね……」

 

田中さんの下戸体験、切ない……

「そういう体験もあって、勤め先のホテルでアルコールが飲めないお客様がいらした時にも、京都の夜を案内できるようになりたくて。だからノンアル酒場を開拓してるんです」

「優しい理由……」

「あと下戸あるあるなんですが、僕が『飲み会に行った時に』って友人に話すと、『いやお前、飲めへんやん(笑)』って突っ込まれるんですよ。いや、そうじゃない! 僕の中では『酒場でのコミュニケーション=飲む』なんやと!『飲む』の意味はお酒を飲むだけじゃなくて、もっと広く捉えられるんじゃないかと」

「なるほど、面白いですね」

「『鉄板とお酒 宗や』さんなら、僕はノンアルのフルーツサワーを飲めるし、一緒に来た友人が日本酒好きなら、店内にある冷蔵庫から色んな銘柄を楽しんでもらえる。お酒もノンアルも選択肢が多いから、下戸も上戸も気兼ねなく楽しめるなと思います」

「酒のアテ的な、ちょっと味の濃い料理もいろいろ味わえるし、高揚感あるコミュニケーションもとれる。『下戸の酒場デビュー』が簡単かどうかはさておき、ここの美味しい野菜料理は気になるあの子にも食べさせてあげたいかも」

 

バーを諦めてしまった下戸の人へ『Bar APOTHECA』

「次はバーに行きましょう」

「え、バーですか。実は僕、京都のバーって行ったことないんですよ」

「大丈夫ですよ! さ、こちらです」

 

『Bar APOTECA(バーアポテカ)』
薬草や果物の自家製シロップも豊富。「薬を扱う倉庫」を意味する店名通り、好みの酒を処方してくれる。
営業時間:15:00〜深夜まで/公式HP

 

「ピシッとしたカウンター、革張りの座席、美しいドライフラワー……大人の空間だ……僕なんかがきていいんですか? この場で一番、背伸びしてしまっている気が」

「大丈夫ですよ。この『Bar APOTHECA(バー アポテカ)』さんは京都でモクテルが飲める場所を探していたとき、すぐに見つかったお店です」

「最近では、インターネットで調べてお越しいただく若い方も多いですね。HPにモクテルについて載せていることもあって、『ネットで見たんですけど、ノンアルコールありますか?』なんて聞かれる方もちらほら」

 

「マスターの松尾さん! やっぱり、ノンアルコールって流行ってるんでしょうか?」

ノンアルコールカクテル自体は、バーに昔からありました。有名なものだと『シンデレラ』(パイナップルジュース、レモンジュース、オレンジジュースをシェイクしたもの)とか」

「あ、昔からあったんですね」

「お酒を飲めないお連れ様もいらっしゃいますからね。ただ『モクテル』という名前で取り沙汰されるようになったのは、ここ5~6年くらいかなと思います

「なるほど〜。ちなみに、こちらではどんなモクテルを提供されるんですか?」

「基本的にはお客様一人ひとりの好みをヒアリングして、何をお出しするか考えます。甘い味とサッパリした味ならどちらがお好みか、サッパリした味の中でも、フルーツの香りの強いものか、そうでないものか……などの質問から答えを出す。考え方はカクテルの提供と何も変わりません」

「お酒の好みでなく味の好みを相談するなら、お客様が下戸でも関係ないと」

「そうですね。モクテルの場合、アルコール入りのリキュールではなく、ノンアルコールのジンや、香りのついたウォーター、果物に卵など、様々な素材を組み合わせて作ります。これもカクテルとほとんど同じです。実際に何かお作りしましょうか?」

「お願いします! では僕は、1軒目のお店でさっぱりとしたフルーツのドリンクを飲んだので、ちょっと甘めのものをください」

「僕も甘めのもので。食事終わりなので、デザートのようなものを飲みたいです」

 

こうして作ってもらったモクテル。左から、ミルクセーキと、柿とアップルパイシロップのモクテル。(いずれも1000円前後)

 

「おお、こっくりと甘くて美味しい! けど、甘みだけじゃなくて、苦味もちょっと感じる複雑な味わいです。本当に大人のデザート感覚かも」

「そんなに……? でも、やっぱり僕は酒好きですからね……お酒も入ってないと物足りないかも……んんん!!!」

 

「まっったりとして美味しい……! 柿とアップルパイの香りが混ざりあって複雑な香りがする。例えるならココナッツみたいな、でももっと奥深い味……疑った自分が恥ずかしくなってきた……」

「ははは、よかったです」

「下戸としては普通のカクテルと同様に、相談しながら自分向けのドリンクを作ってもらえるのはとても楽しいです。モクテル目当てで来る方も多いですか?」

「どちらかと言うと、『私お酒飲めないから、バーとかはちょっと』という方を『ノンアルコールのカクテルも用意してくれるから行こうよ』と誘いやすいんだと聞きます。『どうせお酒飲めないし……』とバーを諦めてしまう方向けに、こういったお店が増えてもいいのかなと思いますね」

「モクテルがあるとわかっていれば、飲めない人も安心して来られますね」

「それと、この店は15時から開けているんです

「15時! なぜそんなに早い時間から?」

女性は妊娠や出産をした時、お酒がしばらく飲めなくなりますよね。それに、子育て中だと夜のバーに出かけるのは難しい。それって、もともとお酒やバーが好きだった人にはストレスだと思うんです。だから、そうした方向けに営業時間を早め、モクテルを提供することで来店しやすくできたら、と」

「そうか、僕もいつか病気をしたら、アルコールを控えないといけなくなるかも……そういう時にモクテルは必要ですね」

「あとは、お酒好きの方がチェイサー代わりにモクテルを挟まれることもありますよ」

「それ、格好いいですね。ただ酔いを覚ますためにお水を飲むんじゃなくて、『次はモクテルにしてください』だと楽しみも増える。ペースをわきまえた、大人の楽しみ方だ」

 

追加で頼んだ、ノンアルコールジンとラズベリーを使ったモクテル。甘みよりもさっぱりとした酸味を感じる一杯で、「ノンアルコールがいいけど、甘いものはちょっと」という人にも良さそう

 

「なんだかアルコールを飲まなくても、酒場やバーを楽しめるんじゃないかと思い始めました」

「それはよかった。僕、『バーは街のコンシェルジュ』であるべきと思ってるんです」

「『街のコンシェルジュ』?」

僕自身、知らない街に行くとまずバーに行くんです。こういう仕事をしていると舌も肥えているので、その土地のバーでマスターに『〇〇の美味しいところに行きたいんです』と相談する。すると、マスターや他のお客様がおすすめのお店を教えてくれたりして」

「なるほど、街の人と繋がる場所でもあるんですね」

 

「もちろん、いきなり話しかけられたくないお客様もいらっしゃるので、場の見極めも必要です。そういう時に間に立って、人と人、人と街をつなげるのがバーテンダーの役割だと思っています

「僕も京都のホテルで働く者として、街の外からいらしたお客様を街に繋げてあげたい、という気持ちはわかります。そのスタンスは参考にしたいですね」

「マスターから、もっと京都の話も聞いてみたい……いつかまた、気になるあの子と一緒にきます!」

 

本当の酒場好きは、飲めない人にも優しい『ホテルアンテルーム 京都』

『HOTEL ANTEROOM KYOTO(ホテルアンテルーム 京都)』
かつて学生寮だった建物をリノベーションし、生まれたホテル&アパートメント。館内にはバー、レストラン、ギャラリーなどを併設し、それぞれ宿泊者以外の利用も可能。
営業時間:19:00〜24:00(23:30LO、バー営業)※火・水曜休/公式HP

 

「次はホテルマンとしても気になる『ホテルアンテルーム 京都』さんです」

「ホテル併設のバーってことですか?」

「ここは元学生寮をリノベーションしたホテルで、1階にバーがあるんですよ。より詳しい話は、こちらのメニュー企画も担うバーテンダー・熊崎さんに聞きましょう」

「熊崎です。よろしくお願いします」

「そもそもホテルのバーってどんな方が来るんでしょうか。やはり宿泊客の方々ばかり?」

 

「もちろん、宿泊されている方が就寝前の一杯を飲みに来られることもあります。そのほかにも、併設するギャラリーに来た方、近くにある映画館帰りの方、近くのホテルにお住いの方もよくいらっしゃいますね。」

「実は僕が働く 『HOTEL SHE,KYOTO』からも近いので、ウチに宿泊されている方もよく来られるんだそうです」

「同じ京都の九条エリアですもんね! しかし、ホテル併設のバーになぜモクテルを導入されたんですか?」

「大きなきっかけは、イギリスに行った時にモクテルで乾杯する人たちを見たからです。現地にはカクテルのように飾られたドリンクがあって。当たり前にノンアルコールで盛り上がる人たちをイギリスのパブやバーで見て『それもアリなんだ』と思うようになりました」

「なるほど。実際に提供されてみてどうですか? ホテル併設のバーと、街中にあるパブやバーとでは違うところもあるのでは?」

「むしろホテルとして『お酒が飲めない人を排除する』のは違うと思うので、モクテルを提供できてよかったと思います。お酒好きの方向けには、ウイスキーもいろんな種類を揃えていて」

 

カウンター後ろの棚には、さまざまなウイスキーがずらり

『ウイスキーからモクテルまで』と掲げると、いろんな人を受け入れたいという姿勢もわかってもらいやすいし、実際に女性お一人で来られる方も増えたように思います」

「モクテルを提供しています、と掲げるのは『下戸ウェルカム』のサインでもあるんですね! ちなみにモクテルを注文されるのは若い方が多いですか?」

「若い方やお酒が飲めない方も多いですが、『普段は飲むけど、今日は体調のことを考えてモクテルに』と選ばれる方もいますね。そういった方には、ご希望なら香りづけ程度にアルコールを加えたり」

 

バーのモクテルメニュー。この他に、アルコールフリーのホットドリンクなども

「バーでは少し甘めのモクテルや、気分が落ち着くホットモクテルを提供しています。それから、日頃はお酒を飲む方向けに、さっぱりとした味のドライ系モクテルも。私はお酒が飲めるので『自分は二日酔いの日だったら、どんなものが飲みたいかな?』と想像したりしながら、メニューを考えますね」

「いろんな人への受け入れ態勢がすごい。確かに『せっかく京都まできたからいろんなお店に行きたいけど、昨日飲みすぎちゃったんだよな……』ってシチュエーションは想像できます」

「やっぱり、お酒が飲めない方にも『自分もこのバーにいていいんだ』って思ってほしいので。常連の方の中にも『いつもの』とモクテルを注文される方もいます。聞かれたらレシピを書いてお渡しすることもあるんですよ」

 

「なるほど〜。これだけ好みに寄り添ってくれたら居心地いいですね。下戸の人が一人で来ても良いし、お酒が飲める友人を連れてきても楽しめると思います」

「なに飲もうかな……ちょっとドライなやつ頼んでみようかな……あーでもホットも気になる……」

「乾さん、すっかりモクテルに抵抗なくなってますね」

 

田中さんは、ホットのコーディアルドリンク(500円)を注文

 

いぬいが注文した、ドライ系の「BRF ジンジャーシロップ&ライムソーダ」(700円)

「ジンジャーシロップのモクテル、さっぱりしていて美味しい! 場の雰囲気もあいまって、『本当にお酒入ってないの!?』って不思議に思いますね!」

「このドリンクに使われてる『BRF ジンジャーシロップ』はちょっと珍しくて。世界中のジンジャーエールを飲み歩いて、自分たちなりのシロップを作ったそうなんです」

「うわあ、そういうエピソードを聞くのも楽しいですよね……。ラム好きの友人が、味わいの違いについて嬉しそうに語ってるのを聞いて『こんな風にストーリーと一緒に楽しめるものがあるのはいいな』って憧れてたんです。お酒にまつわるエピソードを知るように、モクテルでも物語を知ることができるのは楽しいですね

 

「BRF、良いな……」とラベルを黙読する田中さん

「田中さん、めちゃくちゃ楽しそう……下戸の人がこれだけ喜んでくれたら、お酒が飲める側の人も気兼ねなく楽しめますね」

「飲める人と飲めない人の二人連れ、ってシチュエーションはあるあるですよね。私もよく下戸の友人を酒場に連れまわすので、わかります」

「思わぬカミングアウトが! 下戸の友人と一緒に行くときは、京都のどんなお店に行くんですか?」

「立ち飲み屋さんとかに行きますよ。常連さんばかりの店も多いけれど、本当の酒好きは酒場が好きなので、飲めない人にも優しいですよね

「そうなんですね! 意外だ!」

「お酒の専門店には連れて行きづらかったりするけれど、大抵の酒場は『お邪魔します』というリスペクトの気持ちを持ってれば大丈夫なんじゃないでしょうか。別に酔っ払いたくて行くわけじゃなく、その場にある料理や人を楽しむ気持ちがあると思うので」

「その場の料理や人を楽しむ! そう、それが嬉しくて、お酒が飲めない僕も酒場を好きになれたんです」

 

「いい酒場って、刺激とか気づきとか癒しみたいなものに触れられる場所だと思うんです。そういう店は、下戸の方でも楽しめるんじゃないでしょうか」

酒場という環境との出会いを楽しむ。田中さんが言っていた『飲む』って、そういうことだったんですね! 最初こそ半信半疑だったんですけど、アルコールを飲まなくても、酒場には楽しみがたくさんあることを改めて実感しました。また一緒に『飲み』に行きましょうね!」

「ぜひぜひ!僕もまだまだ、リサーチを続けます。『HOTEL SHE, KYOTO』に来ていただいたら、京都のノンアル酒場もご紹介しますよ!」

 

まとめ

「お酒が飲めない人(下戸)でも楽しめる」をモットーに、3軒の店を回った今回の取材。

ノンアルコール(モクテル)や下戸にまつわる話を聞くうちに、「酒場」にはお酒以外にも沢山の楽しみと工夫、出会いがあることがわかりました。

 

一緒に行った相手とのコミュニケーション、「街のコンシェルジュ」としてのバーテンダー、刺激や癒しを得る時間……。それぞれの酒場で、それぞれ楽しめることがある。けれど、そこには共通して「その場の環境を楽しむ」面白さがありました。

 

下戸にとっての選択肢も増えている今。これからきっと、ノンアルコールが楽しめる店は増えていくことでしょう。この流れに乗って、街に広がる「酒場」や「バー」の楽しい世界に足を踏み入れてみてはいかがでしょう。

 

そして僕も、気になるあの子をノンアルデートに誘ってみます……!

 

さて、最後に美味しいノンアルコールドリンクが楽しめる京都の酒場をたくさん調べました。次のページでご紹介します!

 

ノンアルコール酒場MAP in 京都