2019年2月にグランドオープンを果たした「The Sauna」

日本全国に個性豊かなサウナ施設はあれど、木々に囲まれての外気浴や水風呂代わりに野尻湖での湖水浴など、ここまで自然豊かな環境が揃ったサウナは類を見ません。

 

2018年10月1日~2019年9月30日までにTwitterに投稿されたサウナ関連のハッシュタグやサウナ施設名、計1,450,975件の投稿を調査したデータによると、「The Sauna」は東京の有名施設「テルマー湯」に次いで2位という結果に。

 

もともとは、東京にあるWeb制作会社「LIG」の社員として、アメリカ横断や日本一周など、体を張った企画ばかりを担当していた野田クラクションベベーさん。そんな彼が、なぜサウナをつくることになったのでしょうか?

サウナにかける熱い思いについて話を聞きました。

 

日本一周の果てに、初めて見つけた「やりたいこと」

ーーもともとは東京のWeb制作会社で働いていたんですよね。それがどういう経緯でサウナをつくることになったんですか?

「社長からの指示で、日本一周の旅に出たんです。その時に、サウナと水風呂の存在に救われたことがきっかけになっていて

 

ーー日本一周の旅……。

「僕は大学生の時に、社長の弟子としてLIGに関わるようになったんです。ようはインターンのようなものなんですけど。僕の主な業務は、社長の無茶振り企画に取り組むことでした」

 

ーー日本一周も業務の一つだったんですね?

「そうですね。最初は大学生の時にスマホゲームのPRとしてアメリカ大陸の横断企画をやりました。野宿しながら、時には大量の虫に刺されながらもなんとかやり遂げて。その後、晴れて新卒で入社して、最初に命じられた業務が『日本一周』でした

 

ーーいろいろ気になるところはありますが、続けてください。

「はい。日本一周旅の中で、『歩きお遍路』をすることになったんです。徒歩で1400kmのお遍路を回るのですが、夏場だし野宿だし肉体的にも精神的にもキツくてキツくて……。そんなギリギリの状態で訪れた温浴施設の水風呂がバツグンに良かったんです

ーーそれがきっかけでサウナ好きに?

「そうなんです。最初は日焼けで火照った体を冷やそうかな〜くらいの気持ちで水風呂に入ってみたら、『あれ? めちゃめちゃ気持ちいいぞ……?』と。今度は冷えた体を温めるためにサウナに入り、また水風呂に入る。

いま思えば、あれが人生初の『ととのい』体験だったんだと思います」

 

ーー極限の状態で体験した「ととのう」感覚にばっちりハマっちゃったんですね。

「その日はいつも以上にぐっすり眠れて、肉体的にも精神的にもサウナと水風呂に救われたんですよ。そこから自発的にサウナに入るようになり、東京に戻った後もいろいろなサウナ施設を回るのがたのしくてたのしくて……。

サウナがたのしすぎて、目の前の仕事に集中できなくなっちゃったんです。『こんなことしてる場合じゃない! サウナを仕事にしたい!』って」

 

いまも日本各地のサウナを巡っている野田さん

 

ーーハマりようが尋常じゃない。

「それまでは、社長の無茶振り企画に答えてばかりだったので、初めて自分で『これをやりたい!』と思えるものに出会えたのがうれしかったんですよね。ゲストハウス『LAMP』はすでにあったので、じゃあそこにサウナもあったら最高なのでは……? と。すぐに企画書を作って、社長に提案しました」

 

ーー社長からのOKはすぐにもらえたんですか?

「いえ……。社長はサウナの魅力を全然わかっていなかったようで、『俺、温泉派なんだけど』なんて言われたりして。なので、まずはサウナの良さを理解してもらうため、一緒にフィンランドに行って本場の北欧サウナを体験してもらったんです」

 

ーーわざわざフィンランドまで!

「はい。当時の僕は金欠だったので、社長にお金を貸してもらって一緒に行きました

 

フィンランド滞在中に、6箇所ほどサウナを回ったという

 

ーー社長を説得するための視察なのに……!(笑)

「本場のフィンランドサウナを体験した社長は、『めっちゃいいじゃん!』と、すぐにサウナの良さをわかってくれました。フィンランドに行く前は、どれだけ説明しても一切響かなかったのに……!」

 

ーー無事に社長の承認も得られて、ようやくサウナづくりがスタートするんですね。

「はい。多くの人に『サウナの良さが伝わるサウナ』をつくろうと、どんな風にするか考えるところから始まりました。すでにささやかれ始めていたサウナブームに乗っかりたい訳ではないし、僕自身がサウナに救われた原体験があるので、サウナを好きになるきっかけになる場所にしたかったんです」

 

こだわりのサウナストーンは、400kg(約40万円)。経費申請をした本社経理からの反応はなかなかシビアだったとか

「安定しない自然」が120点のサウナを生む

 

ーー具体的には、どんなサウナをイメージしたんですか?

「従来のサウナはどうしても男性のイメージが強いので、性別に関わらずたのしめるサウナにしたいというのは大きかったですね」

 

ーーたしかに、サウナ施設は男性専用が多いですよね

「それにサウナ施設って、写真を撮るにも看板の前くらいしかスポットがないんです。それを見てサウナの中身や良さを想像するのは難しいですよね。だから写真映えも意識したかったし、フィンランドサウナの多くが取り入れているように、水着着用であれば男女一緒に入れるし写真も撮れるな、と考えました」

 

国立公園に指定されている野尻湖。The Saunaの周辺にも豊かな自然が広がっている

 

ーーたしかにこのロケーションは思わず写真に撮りたくなりますね。

「The Saunaの強みって、なによりこの自然環境だと思うんですよね。一日一日気候が変わるし、一週間二週間で季節が変わることもある。常に安定しないんだけど、それが逆に良さなんです

 

ーーでも、安定しないとサウナの運用は大変なのでは?

「そうなんですよね。運営的に考えたら安定するほうがいいし、僕もいろんなサウナ施設を訪れるたびに『安定感すげー!』と感動しますよ。でも、そういう場所っていつでも80〜90点が取れるけど、飛び抜けた点数も出ないんです」

 

ーーブレないってそういうことですもんね。

「その点、The Saunaは120点が出せるサウナだと思っています。その日の気候、薪の湿気や太さ、外気温や水温によって、もしかしたら60点くらいしか取れない日もあるかもしれない。でも、逆に120点や150点というハイスコアを出せる日もあるんです」

 

 

ーー最高の条件が揃った日のサウナは格別だろうなぁ……。

「そりゃあ、もう……最っ高ですよ!! それに、ここは予約制なので、どんなお客さんが来るかによってサウナの状態も変えられるんですよね。たとえばお子さん連れだったらすこし温度を下げておこうかなとか、男性8人の団体だったらガンガン温度を上げておいて、ロウリュもガンガンやったろう、とか」

 

ーーまさに、サウナを通した「おもてなし」ですね。

「オープンしてからも絶えずアップデートを繰り返しています。それに外気浴と森林浴を一緒にたのしめて、地下水の水風呂も湖水浴もできるサウナ施設って国内だとかなり珍しいはずです。季節ごとに違ったたのしみ方や気持ち良さやがあるので、その変化をたのしんでもらえたら、なによりですね」

 

おわりに

最後に野田さんが、こんなエピソードを教えてくれました。

「以前、二泊三日の滞在で毎日サウナに入ってくれたご家族がいたんです。初日はお子さんがすごく嫌そうにしていて、サウナに入ってもすぐに出ちゃうし水風呂も入りませんでした。

でも、二日目にはサウナの二段目に座って入るようになり、いよいよ最終日。最上段でじっと汗をかいて水風呂に入り、外気浴しながらなにか悟ったような顔をしていて……。そういう成長を見られるのはたのしいし、なにより嬉しいですよね」

 

「サウナを好きになってもらいたい!」という熱量が込められたサウナと野尻湖という自然環境、さらにはゲストハウス「LAMP」のおいしいサウナめしが揃えば、そこには極上のサウナ体験が待っています。

 

もうすこしで、雪見サウナや水風呂代わりの「雪原ダイブ」がたのしめる季節がやってきます。四季の変化をダイレクトに感じられるサウナに、ぜひぜひ足を運んでみてください!

 

☆The Sauna公式ページ https://lamp-guesthouse.com/sauna/

 

\橋本先生の「極上!サウナめし」の書籍はこちら/